第二章、その6:王都
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に上った小隊長の一人が猛々しく叫ぶ。
『総いぃぃぃぃん、気を付けぇぇっっっ!!!!!』
瞬間、広場に集う兵達が息を合わせて背筋を正して軍靴を鳴らす。その轟音に慧卓の背筋がびびびと震えた。
『これより、鉄斧山賊団討伐隊の、解散式を行うっっっっ!!!!!!』
がしがしと草むらを強く踏みしめる音が響く。横倒しとなりつつある燦燦とした西日が大地に注いでおり、ライ麦畑を黄金色に靡かせている。街道に繁る名も無い草を踏みしめながら、やけに露出度の高い黒服を召した銀髪の女性は声高く言う。
「ほらっ、あれです!あれが王都です!ちゃんと着きましたよ!」
「分かっているから叫ぶな!」
後に続いて現れるのは、茶褐色のロープを纏う者だ。何処か血生臭い雰囲気が漂う剣をベルトに吊るしており、男は遠くを見るように額に手を当てた。
「・・・随分と久しい姿だ。かれこれ、もう十年か」
「さ、さぁってと!!それでえは私はそろそろお暇させて戴きましてっ、仕事の方に戻らないとならないので!!」
無理に張られた笑みを湛えて女性は男に背を向けた。男は間髪入れず鋭く言う。
「待て、女盗賊」
「へっ!?いいやっ、私は別に盗みをしているわけじゃないですよ!?唯貴族さんの御恵みを掻っ攫うだけのしがない女子で御座いましてーーー」
「自分から言っておるではないか」
「・・・嗚呼」
瞳を逸らして力無い笑みを浮かべた彼女に向かい、男は少し間を空けた後に言う。
「・・・パウリナよ。俺は少し王都で用がある。お前も付き合え」
「えぇぇぇぇえええええっ!!!!」
「・・・その、なんだ。其処まで嫌がられると傷つくんだが」
「いや大丈夫ですよ!私も王都での仕事ですから!!だから剣を抜こうとしないでっ、本当お願いっっ」
いたく必死な形相で、パウリナと呼ばれた女性は頭を下げて助命する。それの男は何も言わず、余りに大袈裟な彼女の所作に呆れるように息を吐き、そそくさと王都へ歩を進めていった。パウリナもそれに気付いて慌てて彼の下へ向かう。
「早く来い、パウリナ。記憶が正しければ、王都の外門は夕焼け前に閉じるぞ」
「知っていますよっ、了解です!ってかパティって呼ばないんですね」
「其処まで仲良くなって無いだろう?」
「まぁ確かに」
愛称を呼ばれたら呼ばれたらで、パウリナは親しみとは別の意味が言外に含まれているとして、男に対して危険を感じるであろう。
彼女は自分の顔を両手で軽く叩き、己の意識をばっと改めようとする。
「・・・それで、御主人は王都にはどんな用があるんですか?」
「ごしゅ・・・。そうだな、あえて言うならば」
男は一瞬の間を生み、血潮が似合う枯れた草木のような鋭い表情
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