第二章、その6:王都
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商人か、或いは役人。もしかすると教会の手先なのだろうか。
(でも、ファンタジーといったらやっぱりこれだよな。やっぱ格好いいや)
だがそんなものから直ぐに興味が逸れた慧卓は、視線を衛兵や騎士に向かって注いでいく。彼らは兜は被らず、鈍色の重たそうな鉄鋼鎧を纏い、腰に一振りの両刃の剣を吊るして凱旋を見詰めている。常と変わらぬ涼しき表情は研鑽された精神の賜物。衛兵は視線をするりと周囲に巡らし、悪事の働きを防止せんと威圧を掛けているようだ。
家屋の二階のバルコニーに立っていた騎士が一人、アリッサに向かって軽く手を振った。赤髪のサイドポニーが印象的な、怜悧な美貌を持つ女性であった。アリッサはそれに気付き、慧卓がこれまでに一度も見た事が無いような実に嬉しき表情で手を振った。騎士はくすりと笑みを零すと、慧卓や熊美に向かって軽く一礼をして、家屋の中へと消えていく。
「・・・今のどなたです?」
「ああ、私の妹、みたいなものだよ」
「・・・みたいなってなんです?弟子とか舎弟とか、そんな感じですか?」
「そういうものとも言えるかな。まっ、後でわかるさ」
慧卓が肩を竦めるとアリッサはくすくすと笑みを零し、徐々に近づいてきた第二の城門へと目を向けた。
街の一口に建立していた城門と比べて、より一層の堅牢さを湛えたものである。扉は見るからに厚く、敵除けの仕掛けもとりわけ多く潜んでいそうな感じがする。櫓の数も見た感じ多く設置されているように見える。
「開門しろっ!」
扉の近くで待機していた衛兵が、城壁の方へ鋭く言う。数秒遅れて、ごごごと、地響きがしそうな重厚な音と共に城門が開いていった。
凱歌を受けた兵達が胸を張ってその中へと潜ると、大きく開けた広場が出迎えた。正面奥の建物には高らかに、樫の花を描いた旗がひらめいている。周囲を見やれば、壁際には赤と白の円を交互に描いた的を貼り付けた大きな藁人形が所々に設置されたり、或いはそれに似た鎧人形が置かれたりしている。
「・・・此処って、訓練施設か、或いは集兵施設かしら?」
「両方です。つい最近、王都にて区画整理がありまして、それまで彼方此方に置かれていた軍施設を北方に集合させたのです」
「成程、だから北側から入門したのね?」
「はい、その通りです」
行軍する兵団が広がっていく。まるで体育祭の如く、まるで夏の高校球児の如く兵員が横広に整列していき、自然と慧卓や熊美達が最前列へと進んでしまう。ふと目を向ければ兵団より幾分か離れた所で、コーデリアが一人の熟年の女性と礼を交わしていた。静かな雰囲気が似合う、落ち着いた所作の女性である。
「お帰りなさいませ、王女様」
「ただいま、クィニ」
馬上より声を掛けたコーデリアは、再び兵員の方へと身体を向けた。設えられた石壇
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