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王道を走れば:幻想にて
第二章、その6:王都
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んで王女様がこっちに居るって皆分かっているんですか?」
「私が使いを放っておいたからな」
「あぁ、そういう事」

 慧卓が呆れを僅かに含めた視線を向けた先では、宮廷を抜け出したお転婆娘が華のような笑みを浮かべ、街中を埋め尽くす臣民に向かって気品溢れる手を振り続けていた。臣民等は歓声を叫び、口笛を鳴らし、花びらを宙にばら撒いて兵達の無事の帰還を祝っていく。 

『お帰りなさいっ、姫様!!!』
『山賊退治っ、良くやった!!よく戻ってきたっ!!流石は誉れ高い王国兵だ!!』
『ねぇ、あの人よ!!あの人!私の婚約者!!ほらあそこ、あの列の一番右の人!!!』
『ヒューッ!いっちょ前に決めたな!!ちゃんと止めを刺したか!?』
『・・・良かった。怪我が無いようで』
『ハボックっ!!!軍を解散した後で後で飲み比べだ!!!聞こえたかぁぁっ!?!?』
「・・・やれやれだ」

 王女と馬を合わせるハボックは何時もながらの気の良い声々を聞いて呆れるように言いながらも、胸に一縷の温かみを感じて爽やかな笑みを零して歓声を受けた。
 彼らの後背には軍旗を掲げた小隊長等が、そして此度の遠征中において討伐軍の中でも抜きん出て戦果を上げた精鋭等が続く。それら精鋭陣を過ぎた後に、慧卓等の馬が並んで歩いていく。衆目の視線は、最も体躯の立派な熊美を中心として注がれていた。
 
『おいっ。あのデカイのが豪刃の方か?あの王冠喰らいの?』
『でなきゃあそこまで鍛えないだろ!!クマ様っ!!!お帰りなさい!!!』
『クマ様ぁぁあっ、俺ですっ!!黒衛少年騎士団のっ、炊事係のヨブです!!!覚えていますかっっ!?!?』
『まぁまぁまぁ、随分大きくなったわねぇ、あの人もっ』

 指揮官たるハボックに勝るとも劣らぬ熱気に慧卓はたじろぎ、顔に降りかかる花びらを払いながら、横合いにつけるアリッサに問う。

「あの、もしかして俺達の事も言ってます?」
「ん?言っては拙かったか?」
「・・・いいえ、別に。もう開き直りましょう!堂々と凱歌を頂戴します!」
 
 慧卓が背筋を伸ばし、胸を張って馬を進める。自然と引き締められた表情に向かって、民衆がそれぞれ好奇に満ちた視線を向ける。

『ん〜、あれがそうかな?黒髪の異界の若人って奴は』
『でしょう?しっかし見れば見るほど変わった風貌よねぇ?・・・結構頭抜けてそうな顔つきね』
『セラムによく来たっ、異界のっ!!歓迎するぞ!!!』
『ラザフォードにようこそっ!!愉しんでいって頂戴っ!!!』
『・・・堂々としているな。良い男子だ』
『ふん。あんな奴、二・三日すれば直ぐに化けの皮が剥がれるわ。其の時の吠え面が愉しみだな』

 歓迎する者に歓迎せぬ者、半々といったところか。歓迎しない者の視線は所謂見縊りや興味の無さからいっ
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