第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
三十九話 交差する風
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殿朗が扉に向かって叫ぶとその扉を開いて一人の小柄な少女が部屋へと足を踏み入れてくる。目玉の付いた市女笠を被った金髪の少女、その少女を目にした瞬間、殿朗は勢い良く後ずさり逃げようとして部屋の隅へと転がるように移動するがそんな所に移動しても逃げられる訳も無くゆっくりと振り返ればすぐ後ろに少女が立っていた。
「失礼しちゃうなーもう!あたしを見ただけで逃げる事無いじゃんかー!」
「な、な、な、な、何故此処に居るのですか洩矢様!この場所に関する資料は他の交易所に置いていなかった筈ですぞ!」
「あんたっておめでたいね〜――――あんたが此処まで案内してくれたんじゃないか」
諏訪子の言葉に殿朗は唖然とした。つまり自分は最初から泳がされていた、と言う事なのかと。
「喧嘩を売った相手が悪かったねー、うちの虚空は性悪だからあんたにわざと手を出さずに放置してたんだよ、そうすれば勝手に巣穴に逃げ込むからって」
諏訪子は顔に笑みを浮かべ殿朗にはゆっくりと近付きながら右手を伸ばす、その手には闇よりも暗い黒が立ち昇り見るものに恐怖心を植えつける。その黒を見た殿朗は腰を抜かし壁を背にその場にへたり込んだ。
「わ、わ、わ、私はひゃ、百鬼丸に脅されたのです!私の本意では無いのです!信じてください!全てはあの鬼の企みで私は被害者なのです!私は善良な商人なのです!」
涙を流しながら懇願してくる殿朗を諏訪子は冷たい視線で射抜きながら呟いた。
「へぇ〜そうなんだー、鬼に脅された善良な商人は女の子をおもちゃにしたり道具みたいに売り払ったり、気に喰わない相手ってだけで一家諸共焼き討ちにしたり、騙して金を貸し付けた相手が返済出来ないからって獲物代わりに狩りをして楽しんだり、ただの快楽で人を石柱に括りつけて池に沈めてそれを肴に酒を飲んだり、小さな村を隔離して禁薬の実験場にしたり、するんだー!凄いねー!」
諏訪子は台詞が終わった瞬間、殿朗の顔面目を右足で蹴り払い、その蹴りを受けた殿朗は側面の壁に叩きつけられ無様に鼻血を流した。
「いい事教えてあげる、あんたにもう戻る場所は無いよ。あんたが此処に逃げ出した後、あんたに関係する場所全て潰してきたから。あんたの悪行は全部ばれてるしそれに……神に喧嘩売って無事で済ます訳がないでしょう?」
歯でも折れたのだろう、殿朗は口を押さえながら顔を真っ青にして震えており、そんな殿朗に諏訪子は躊躇無く手を伸ばした。
砦の一室に聞くに堪えない悲鳴がこだます。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
あたしが部屋から出ると丁度此方に来ていた月詠と出くわした。
「おい洩矢今の悲鳴は何だ?まさか…」
「死ん
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