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王道を走れば:幻想にて
第二章、その5:衣装変え、気品な方角
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生服に似たような感じがしている。唯この世界においては貴族が召すような格好、というものであろう。慧卓の体躯にぴったりと適うそれは、正に慧卓の凛々しき魅力を引き立てるのに絶好の得物といえよう。乙女心を燻るような引き締まった雰囲気を、今の慧卓は自然と発していた。
 だがそれ以上に目を奪うのは、矢張り何といっても王国随一の美しき少女、コーデリア=マインの衣装である。淡い蒼髪が良く映える純白のドレス。飾り気は少なく、唯着た者の純真な美貌をより引き立てるだけである。否、寧ろ不要な飾りを取り払ったために、コーデリア自身の可憐さと清楚さが前面に押し出される形となっている。きらきらと輝く星空の中ではその白は一際強く衆目を集め、美しさをより絢爛とさせるであろう。そんな思いをさせるまでに見事な造りをしたドレスだ。少々恥ずかしいのかいじらしくも頬を赤く染め、琥珀色の瞳に水気を帯びさせるコーデリアは、正に大陸一の美女に相応しき美麗な姿であった。
 故に、アリッサが鼻息をはぁはぁと荒げるのも無理はない。可憐な姿が台無しである。

「はぁ、はぁ、はあっ。素晴らしいっ!流石殿下だ、月も恥らう可憐な姿。あっっっはぁぁ、陶酔してしまうっ」
「・・・アリッサ殿。この世の天使は此処におったのだな・・・。私、年甲斐もなく感動してしまったよ・・・」
「そうでしょうそうでしょうとも!コーデリア様の可憐さは人類の禁忌を越えるレベルですともぉ、っと!?」
「あっ、拙い」

 アリッサが息を詰まらせ、ワーグナーもまた硬直する。頭だけを露出させた間抜けな彼らを、フロアの奥から戻ってきたトニアが目敏く見つけてしまったのだ。彼女は一瞬硬直した後、にやけ面でアリッサ等に近付く。

「うおっ、こっちに来おったっ!?詰めろ、ちょっとそっち詰めろ!!」
「ちょっとっ!?そんな押されたら拙いですってっ!はみ出る、身体がはみ出ますって!!」

 どたばたと慌てる二人。元々一人分のスペースに二人も、しかも床面積を取る衣装を着ているだけにアリッサの方は幾分か苦しそうである。ワーグナーもまたしかりで、ドレスの裾を踏んづけて転ばないかひやひやとしている。

(すっ、滑るぞっ!このひらひら結構滑るってっっ、うおお!?!?)
「おおおおおおっ!?」「うわあああっ!」

 危惧通りにワーグナーは滑り、咄嗟に掴み取ったアリッサの腕を引っ張る。哀れアリッサは抵抗の術無く態勢を崩し、間抜けな二人はカーテンを割って床へ転げた。 

『あっ』

 皆が皆、呆気に取られた声を出し、暫し目を合わせて硬直する。そして戸惑い声で慧卓が声をかけた。

「・・・アリッサさんに、ワーグナー造営官?」
「こっ、こんにちは・・・ケイタク殿、それに、殿下?」
「は、ははは、本日はお日柄もよく・・・」
「・・・店主」
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