第二章、その5:衣装変え、気品な方角
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に驚き、噴出す。ぱくぱくと金魚のように口を開閉させ、大声で驚きを表そうとする。
「お、おおおお、おおおおおおおっ、王女さむぐぅっ!?」
「大きな声を出すんじゃないっ!!周囲に迷惑でしょうが!!!!」
「ケイタク殿の声が一番大きいです・・・」
驚愕から戻ってきたトニアは、しどろもどろとなりながらも、真っ白となった思考から御店の定番文句を必死に取り戻そうとしていた。
「えっ、えっとぉ、改めまして、ようこそ『ウールムール』へ!本日はお日柄もよく〜、えっとぉ・・・」
「最初はお日柄云々じゃないよ、トニア」
「おっ、おじいさん・・・」
トニアが肩を縮こまらせながら横へ退くと、口周りに薄らと白髭を生やした老人が現れてきた。茶褐色のローブに身を包んだその老人は、不思議と耄碌した様子を感じさせぬ瞳でコーデリアを見詰め、好感の持てる穏やかな声を掛けた。
「ようこそ、『ウールムール』へ。華麗な衣服より素朴な真心まで揃える、万世一系の仕立て屋で御座います。・・・久方ぶりですな、コーデリア様。最後にお会いした時から数えて、五年ばかりとなりましょうか。とても美しくなられたようで」
「お久しぶりです、キニーさん。あの時はまだ、見習いだったと記憶しておりますが」
「ははは・・・今では念願叶いまして漸く、此処、『ウールムール』の店主ですよ。そしてお隣に負わすは異界の方、ケイタク殿ではありませんか。ようこそ、私の店へ」
「えっ、もしかしてその異界のなんたらっていう噂、もう街に広まってたりします?」
「はい、広まっておりますよ。『異界の若人、大らかな祝祭にて、人々を沸かす』とね」
「あ、あはははは・・・誰がそんな噂を流したんだろうなぁ・・・」
口端を苦く歪めた彼が咄嗟に想起したのは、ひらひらと手を揺らしておどける、自称コーデリアを愛でる会の若き王国兵の二人であった。
老人は続けて問う。
「さてコーデリア様、本日はどのような服をお求めでしょうか?昔通り、宮殿に相応しき華麗なドレスですかな?それとも清廉さと美麗さを調和させた私服でしょうか?」
「あの、実は必要なのは自分で」
「成る程、異界の方がご入用でしたか。それで、何がお求めですかな?」
「自分、今度王都の宮殿の中に入る事になっているのですが、それに相応しい服装が入用なのです。貴族の方々に失礼の無いような服が」
「承知致しました。では此方へどうぞ。段差にはお気をつけを」
老キニーの後に続く慧卓は、振り返ってコーデリアに手を差し伸べる。彼女がそれを掴んだと確かめてから、段差を乗り越えて店内へと入り、彼女の入店を助けた。
御礼の首肯をする彼女に向けて、慧卓は気軽に話しかける。
「王女様、よかったら服を見て回って大丈夫ですよ?」
「えっ?でっ、でも、今日
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