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王道を走れば:幻想にて
第二章、その5:衣装変え、気品な方角
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子で、ワーグナーは確信の息を漏らしながら眼を見開いた。

「あの通りに入ったという事は、矢張り『ウールムール』だな・・・準備は良いか、近衛よ?」
「無論ですとも、ワーグナー殿!」

 満を応じて両者は威風堂々たる様で通りへと姿を現した。町を流離う吟遊詩人のような大地の色をした軽い衣服に身を纏うワーグナー、雇われの侍従のように質素な衣服に身を包んだアリッサ。普段の高貴さ、そして威厳さをみずほらしい衣服が見事に掻き消している。加えて努力を重ねる学生のような、額が太い眼鏡を二人揃って着用している。
 これこそが苦心の末に導き出された変装であり、絶対に見破られはしないという自信すら沸いてくるものがあった。だからこそであろう、彼らが妙に自信有り気なしたり顔をしているのは。

『この変装、見破れるものならば、見破ってみよ!』
「あれワーグナー造営官じゃない?」
「本当だわっ。なんであんなに目深な帽子を被っているのかしら?」
「おいおい、ありゃ近衛の美人さんじゃないか!あんな趣味あったのかよ!?」
「うほっ、いいポーズ。ほいほいついていきそうだぜ」
「・・・・・・・・・行こうか」
「・・・はい」

 堂々たる態度を打ち崩し、とぼとぼと慧卓らを追従する両者。そりゃ服を変えても顔は変えられない、というありふれた論理の前には、高名な彼らの稚拙な小細工は通じぬであった。
 さて彼らが追う先。所々で建物の影が道を覆う、まるで路地のような狭い通りを歩く慧卓とコーデリアであったが、数分もしないうちにその苦労から解き放たれる。民家と民家の間、他の家屋より一回り大きな石造りの建物に出くわして歩を緩めていった。家の標識代わりであろうか木の看板に、『セラム』の文字で何か流流と書き連ねられている。

「ケイタク殿。此処が、『ウールムール』です」
「ほー・・・あ、敬語」
「あぅ、流石に御店の人の前では、ね?」
「あっ、そう言われれば・・・ごめん」
「い、いいえ!こちらこそ・・・」

 何処となく恥じらい気味の二人は手を離し、その目的の家屋へと近付く。そしてコーデリアは、看板の近くの石壁に掛けられていた小鈴をちりんと鳴らす。 

「ん?トニア、御客さんがいらしたようだ。御出迎えをお願いしてもよいかな?」
「はい、分かりました!」

 店内よりその鈴の音を、幼さが抜けぬ雀斑の少女、トニアが聞き入れ、扉へうきうきと歩を進ませた。

(ふふふっ、記念すべき第一号の御客様ねっ!)

 祭事に浮かれて散財したなけなしの金銭を、今こそ取り戻すときが来たのだ。労働万歳、財貨万歳。心の中で喝采を叫ぶ労働の妖精の声に押されるように、彼女は満面の笑みを湛えて扉を開けた。

「いらっしゃいまぶほぉっ!?」

 瞬間、その扉の向こうに立っていた人物
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