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王道を走れば:幻想にて
第二章、その5:衣装変え、気品な方角
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女の心の軽さを顕すように、ひらりと服の上を踊った。

(でも、なんか違うよな・・・)

 一方で慧卓は一つもやもやとした疑問を浮かべて、コーデリアのような気分を抱けずにいた。友達という事に関して一つ、彼の中で違和感を感じたのだ。彼の中の友人同士では畢竟在り得ないような、そんな事を自分達は行っている。一見深さを思わせる疑問であったが、慧卓は直ぐに答えを見つけて納得した。 

(・・・そっか、言葉や態度が、まだ堅苦しいんだ)

 彼の中の友達とは、少なくとも敬語を使って話し合ったりはしない。互いに敬意を表したりはしても、若々しい者が丁寧語や尊敬語を乱発したり、或いは着飾った高貴な所作をしたりなど、気に掛けもしないものだ。  
 一向に返事をせぬ慧卓を見て、コーデリアは疑わしげに問う。

「ケイタク殿?如何されました?」
「・・・コーデリア、手を出して」
「へ?あ、はい・・・」

 一瞬呆気に取られながらもコーデリアは手を差し出す。その柔らかな珠玉の手を慧卓は緊張で強張った手で握り締め、歩を共にする。

「あ、あの、ケイタク殿?」
「とっ、友達なら、手を繋いで買い物するもんだっ!」
「・・・そうなのですか?」
「そうだっ!ついでにいえば敬語も不要だったりする!」
「は、はぁ、分かりました」
「敬語要らない!!」
「わ、分かった!・・・これでいいの?」
「お、おう」

 戸惑いつつもコーデリアは敬語を捨てる。慧卓は視線を泳がせながら、急に積極的となった自分自身に内心で驚いていた。

(何やってるんだ俺!?大丈夫なのかよ、相手は王族だぞっ!!)

 特段の考慮無く無礼な事を及んでしまったと後から悔やみ、慧卓は急いで手を離そうとする。而してその手をコーデリアがぎゅっと握り返してきて驚く。ふと彼女の顔を見れば、僅かに顔を赤らんだものにしながら慧卓から視線を離し、何気と無く通りの賑わいを見遣っている。所謂照れ隠しという奴であろうか。

(・・・あったかいなぁ)

 唐突に相手の手を握る失態に釈明を入れたくなるどころか、逆に慧卓は掌から伝わる相手の温かみにほっとしてくる有様であった。思った以上に単純で感覚的な自身に呆れながら、慧卓は通りの中を歩いていった。
 その二人の様子を、背後から四つの眼の光が睨むように見据えていた。通りの裏陰から顔だけを覗かせるのは、アリッサとワーグナーである。

「なんてけしからん奴っ!王女様の絹の肌に触れ、あまつさえ握り締めるとは、なんてうらやま...いやけしからん!!!」
「ほう...あ奴め、案外手馴れた様子...さては異界で女子を二・三は手懐けているな」

 感心する素振りを見せるワーグナーを、アリッサは蛇をも萎縮させるような目つきで睨み据える。それを一切気にせぬ様
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