第二章、その5:衣装変え、気品な方角
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きっと周りの人達も同じである。不快だからといって自分だけ周りの波を崩す格好で突出してしまったら、それこそ周りの人々により強い不快感を与えてしまう。だからこそ波を崩さぬ余裕を持って、何事にも臨むのだ。それに祭りとなればそんなもの敢えて崩さなくても充分に楽しめるものだ。目の前のその光景がそれを物語っている。
「だから王女様も、楽々気分で愉しんでいいんですよ、友達と踊りでもするみたいな気分で。あっ、ほら!あの蜂蜜が塗られた御菓子、美味しそうですよ!ん?うっそ、あれパイナップル?此処って結構南方寄りなのか?」
「・・・」
「王女様?」
悩むようにコーデリアは俯き加減で歩いていく。慧卓はその憂いを陰に置いた横顔を眺め、おずおずと問いかけた。
「あの・・・俺何か変な事言いましたか?」
「いえ、そうではないのです。ただ、友達という言葉を聞いて、ちょっと思い出した事があって。
「はぁ・・・」
雰囲気が変わった目の前の乙女に頸を捻りながら、慧卓は言葉を待つ。コーデリアはゆっくりと、心の声を紡いでいった。
「今まで分からなかった事があるんです。何故、人々は知り合って間もない者に対してただ友達になったからという理由だけで、あんなに易々と心を開けるのか。ずっとそれが疑問でした」
「・・・それはまた、如何してそのような疑問が?」
「私、貴方が思うような、友達が居ませんから」
「・・・・・・」
気まずげに慧卓は視線を逸らす。その彼の気を解すように、コーデリアは何処か明るさを装った声で言う。
「私、王家の中でも鷹派の部類に入るらしいんですよ?だから鳩派が多い宮殿内では除け者扱いをされていて、気を許せる者が居なかったんです。同年代では皆無。年上で近しい者は、アリッサくらいだったんです。だから、気を許せる人とはどんな者なのか、その者、友とはどんな会話をするべきか、ずっと分からなかった・・・」
陰惨な宮廷模様に生まれながらにして身を置き其処で育ってきたコーデリアの苦悩を、自分は無遠慮に踏み抜いてしまったのか。慧卓は己の無神経さに対して、表情を崩さす苛立ちを抱いた。
而してコーデリアは慧卓の苛苛を晴らすように、一転して爽やかな微笑を浮かべながら言葉を続けた。
「でも昨日と今日の経験で、それが少し分かった気がします。ケイタク様と一緒に歩いていると、凄く軽やかな気分になれるんです。垣根を飛び越えるような感じがして、今とても気が楽になっているんです」
「・・・気が楽、ですか」
「はいっ、皆と同じ気持ちです!空を飛んでいるみたいに、足が軽いんです」
本当に飛んだ事なんて無いんですけど、とコーデリアは冗談めかしく笑みを零した。その歩みは深き悩みを感じさせぬ、まるで快晴の空を仰ぐような軽やかなものだ。淡い蒼髪が彼
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