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王道を走れば:幻想にて
第二章、その5:衣装変え、気品な方角
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「はい、此方に」
 
 目を据わらせたコーデリアが厳かに命を下し、キニーはそれに合わせて一つの細長い木箱を何処からか取り出し、蓋を開けて差し出す。コーデリアが其処から掴み取ったのは、乗馬用の細い鞭であった。

「貴方達、跪きなさい」
(・・・結構似合ってるな)
(アリッサ御姉様、なんて可憐な瞳・・・今夜はこれね)

 慧卓は他人行儀で感心しながら、トニアは怯える美女の姿に心ときめかせて、その悲惨な成行きを見守っていった。風情ある老舗の中から二つ、野蛮な悲鳴が木霊した。




 天気、雲疎らなれど晴天也。気分、馬酔いしないで結構気楽。だが緊張。身体の前面から感じる小さくも温かな女性の香りと、顔に背筋にひしりひしりと注がれる嫉妬と怨嗟が入り混じった視線に。 
 様々な催しを通した後、慧卓は漸くにして『ロプスマ』の街から外へと出でて、コーデリアと同じ馬を共にする形で行軍をしている。数日の間に起きた様々な出来事を経て仲が友人のレベルに達したとはいえど、同じ馬に乗って行軍するというのは正直予想外だ。自転車ニケツすら経験していない慧卓にとっては、胸がどぎまぎしてならぬ代物である。
 だが変われるものならば変わって欲しいといえば即座に志願者が殺到するのが、この雰囲気だ。後背から注がれる兵士達の視線など、最早殺気が篭るレベルである。

「仲良いよな、あいつと王女様」
「そうだな、祭りの後から一気に距離が縮まった気がするぜ・・・結構進歩してるよな?王女様の後ろに乗るだなんて」
「・・・ごめん、ミシェル。もう一回言ってくれ」
「?王女様の後ろに乗る、だけど」
「・・・・・・ふぅ」
「どうして賢者みたいな面構えをしているんだよ!!」

 諍いを始める二人の兵士を横目に、馬に揺れるアリッサは心底羨ましそうな視線を慧卓に注ぎつつも、一方で自重の精神を抱いていた。流石に尾行はやり過ぎたといったところである。

(暫くは、王女様の御愛好を控えるか・・・)

 しかし、それでも愛の心を抱き続けるのが忠義の騎士である。彼女にとって、それを言葉に出せるような立場で無いのが口惜しい。

(それにしても、私を踏みつけるときの顔といったら・・・)
「可愛かったなぁ・・・コーデリア王女」

 アリッサが心底同意しそうな言葉を、『ロプスマ』の造営官の館にて、ワーグナーが漏らした。立派な机に頬をつけながらぶつぶつと言う。

「誰か此の私の気持ちを解せる理解者はおらんだろうか?」
「はいはい、分かっていますから、さっさとこれに目を通して下さい」

 財務官のジョンソンがどさっと、ワーグナーの顔の近くに書類の束を落した。財務報告に治安報告、それの加えて市民からの陳情書等、読まなければならぬものが大量にある。

「・・・なぁジ
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