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王道を走れば:幻想にて
第二章、その5:衣装変え、気品な方角
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人が浮かべていた清清しい笑みを察してか、各々の納得を浮かべながらそれぞれの日常へと戻っていく。而して中には例外が居た。王女の護衛を承った王国兵、ミシェルとバックがそれであった。雀斑をぽっくり歪めながらミシェルが相方に話し掛ける。

「あの人達、宛がわれた仕事とかしないのかよ?」
「しなくても、結構な高笑いをすれば給料出るんだろ」
「なんて羨ましい。俺も何時かそんな職に就きたいぜ」
「就いて三日で戦死だから止めとけ」
「なんで死ぬのよ?」
「主任務が、前線で変態相手に剣を振るうばっかか、それか書類の山に頭突っ込むばっかだから」
「あっそ。なら俺、一生兵士のマンマでいいや」
「つまり一生底辺身分か、御愁傷様」
「お前も序でに引っ張り込むからな」
「やめろし」

 そういうなり、二人は意気が合ったかのように紅茶をずずずと啜った。因みに二人が飲んでいるのは檸檬の果汁入りではない。蜂蜜入りの紅茶である。 



 

 朝餉も終わり、街をゆったりと歩く慧卓とコーデリア。手と手が触れ合わないギリギリの距離と保ちながら、未だに続く祭りの様を眺めていた。昨日のそれと比べて四割方少なくなっている人の群れ、そして幾つか畳まれた店の跡に人が集い、肴を片手に語り合っている。が、矢張り祭事の初日と比べれば寧ろゆとりがある風景といえた。

「流石に二日連続、というのは無理がありましたね。勢いが下火となっています」
「はは、寧ろこれくらいが丁度良いのかもしれないですよ」
「?それは如何いう事でしょう?」
「だって、通りに人が沢山混んでいたら自由に動けないじゃないですか。露店には沢山の商品があって、沢山の行楽が待ち構えています。けれど近くで見てみたいのに人の波が邪魔をして一行に辿り着けない。寧ろ此方が人々の邪魔になっている気さえしてくる。そういうのって疲れますし、嫌になっちゃいますよ」

 今彼の脳裏に浮かぶのは、祭事の日々に羊の如く群れを色とりどりの群集である。屋台が所狭しと並び、その間を縫うようにして人の波があっちにこっちに行ったり来たり。踊りに混じろうとも、御籤を引こうとも一向に微動だにせぬ人並み。急けば人並みを崩して舌打ちをされ、遅ければ無言のプレッシャーを当てられる。
 それに辟易とするように慧卓は溜息を零し、コーデリアに言う。

「王女様の言うとおりです。祭りは愉しくなければ、愉しめなければ損。だったらそれに参加する人達はたった一つの事さえ気をつければいいんです」
「・・・それは?」
「『人に迷惑を掛けない』!この真心さえあれば、御祭りは人々の記憶の中に、愉しい思い出として残り、後に生まれる人達にその記憶を伝える事が出来ます。そして未来でも、御祭りが生きていくんです」

 だが慧卓は思う。自分が思っている不快は、
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