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王道を走れば:幻想にて
第二章、その4:甘味の後味
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がらおずおずと焼き鳥の串を抓み、その先端を慧卓の口に向けた。ぷるぷると指先が震えるのは、串を持って指先が疲れてきているためだけでは無い。

「はっ、はいっ、あ〜ん...」
「あ〜〜〜ん...」

 王道を真っ直ぐに行くシチュエーションに内心で大喝采を挙げながら慧卓は焼き鳥を頬張る。口の中に広がる芳しい肉の味も然る事ながら、目前で上目遣いで顔を赤らめたこの世の天使は、まさに至上の喜びを彼に与えてくれた。思わず笑みを零してしまうのを誰が責めようか。

「ふふふふっ、ふふふふ!」
「...も、もうっ、直ぐに調子に乗って甘えてくるんだからっ...」
「ごくっ。んじゃお返しだなっ、はい、あ〜ん」
「えええっ!?!?」

 慧卓はアップルパイの矛先をコーデリアの口元に近づける。コーデリアは頬の赤らみを益々と高めて慌てる。気恥ずかしげに目が泳ぐ様ですら、彼女の元来の可憐さを際立たせるようで、慧卓の心をひしと掴み取っていた。

「あっ、あの、ケイタクさん!流石に公衆の面前でこういう...その...」
「あ〜ん...」
「はっ、恥ずかしい事は、出来れば、出来れば...その、誰もいない時の方が...」
「あ〜ん...」
「......このっ、馬鹿!あ、あ〜ん,,,」

 意を決して、コーデリアは小鳥のようなあどけなさを保った口先をパイに口付け、それを齧り取る。唇からはみ出している林檎の実を口に含み、花恥ずかしき思いで視線を逸らしてそれを噛み締めた。

「ね?甘くてクリーミーで、美味しいだろ?」
「......馬鹿」

 拗ねた言葉を出すコーデリアであったが、慧卓から離れようとしない。そのいじらしさに胸を締め付けられ、慧卓はそれを表に出しては面白みが無いとばかりに、己もアップルパイを食べ始めた。
 その微笑ましく甘ったるい光景を見る街人の視線も、自然と微笑ましいものと変わっていく。一部を除いては。

「ふむ...上手くいっているようで安心したぞ...ふふふふっ、あんなに恥らっているのにケイタク殿と距離を開けようとしないとは...なんといじらしい姿か...」
「全くです...こんなに胸を動かされたのは、妻が二人目を懐妊した時以来ですよ...あぁ、可愛いなぁ、もうっ!」
「隊長、鼻から敬愛が吹き出ているぞ」
「近衛殿、目から忠誠が漏れていますぞ」

 建物の陰から顔だけを覗かせて、アリッサが歓喜の血涙を流し、ハボックがでれでれと鼻血を垂らす。致死量までは流れていないのだろうが、二人の足元には既に禍々しい水溜りが広がっていた。
 アリッサは血涙を流した容貌のまま生真面目な表情を装い、ハボックに語りかける。

「意外と造営官達が簡単に折れて助かったな。街の活性化の利点にすぐさま気付いてくれて、大きな援助を受ける事が出
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