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王道を走れば:幻想にて
第二章、その4:甘味の後味
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 あまりにあっさりと階級の差を崩しに掛かる熊美にコーデリアは呆気に取られる。そして周囲を窺うように視線を巡らせる。見れば其処に、明瞭な格差の存在など見受けられない。強いてあるならば、警備兵と市民、商人と市民、その些細な違いだけだ。富と力を笠に着る者も居ない此の場では、久しく脱ぐ事が適わなかった王女の器も外して良いのかもしれない。

「...そうですね......そうね、そうしましょう。クマさん、一つ下さい!」
「やっと素直になったわね!じゃぁこれはオ・マ・ケっ」

 コーデリアの言葉から、何処か意識的に凛然に構えられていた色が消える。それは詰まり、今の彼女が唯の少女となった事を指す。
 熊美は喜びを表し、使い捨ての木皿にたんまりと焼き鳥を乗せる。零さぬようにコーデリアが皿を持つが、意外と重みを感じさせるそれに吃驚とする。

「ちょ...ちょっといっぱい盛っていますね...こんなに食べたら、お腹がいっぱいになっちゃう...」
「お互い、交互に食べればいいんじゃない?此処には甘味処もいっぱい出店しているから、きっと愉しめるわよ。ほら、あそこのアップルパイとか」
「アップルパイ?...ケイタクさん、早くいこっ!!」
「うおおっ!?順応性凄いな!」

 甘露の響きに惹かれてコーデリアはそそくさと歩き出す。最早その口調や態度に王女としての高貴さは感じられず、代わりに若々しい溌剌さが感じ取れる。これこそが彼女の生来の性格なのだろう。
 串を指先で抓んで彼女は焼き鳥を頬張った。程好く甘さと辛さが調和したタレ、それを吸収した肉の食感は即席で用意されたいう割には、王宮の宮廷料理を食してきたコーデリアを唸らせる味があった。

「これ美味しい...ねぇ、ケイタクさんもーーー」
「おばちゃん、このアップルパイ二つ頂戴」
「はいよっ」
「ちょっ、ちょっとケイタクさん!!!」

 何時の間にか慧卓はアップルパイの屋台に並び、御代を払ってパイを二つ買っていた。両手にひとつずつ白パンを持ちながら慧卓は気楽に、友達にでも話しかけるような軽やかさでコーデリアに言う。

「お待たせっ。で、なにかな?」
「もう、勝手に行かないでよっ!これ食べない、って聞いてるの」
「う〜ん...食べたいのは山々なんだけど、今両手が塞がっているんだよな〜〜」

 にやつく慧卓。意味を図りかねて一瞬逡巡しかけたコーデリアの隙を突くように、続けざまに言う。

「出来れば食べさせてもらえないかな〜って思うんだけど...」
「あっ、貴方っ、最初から狙って...!」
「おっとっと!あ〜、パイの果実が毀れる〜」
「わっ、分かりました!やりますよ!やればいいんでしょ!」

 コーデリアは投げ遣り気味に声を出し、こみ上げる羞恥心を赤面という形で顔に表しな
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