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王道を走れば:幻想にて
第二章、その3:御勉強です、確りなさい
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 先まで天を覆っていた、まるで神が怒っているかのような怒涛の雷雨。今では小雨と相成り、稲光も小さいものとなっている。雲は相変わらず絵の具を注いで乾かしたかのようなどんより黒色であるが、それでも夕暮れを意識させるような涼やかな臭いを感じさせる。唯の通り雨を凌いだ人々は思い思いに安堵の息を零し、夕餉の支度に精を出していく。
 それは此処、『ロプスマ』という名の街でも同じであった。いわんやその街の一角、とある街一番の宿屋でも同じ光景が広がっているのは自然であった。

「ぁぁぁ......疲れたぁぁぁ....」

 よてよてと生まれ立ての馬のようなぎこちない足取りをする者。服も身体もずぶ濡れとなった慧卓がげっそり顔で歩き、木の椅子に腰掛けた。豪雨に急かされた行軍は彼の体力を削り、馬の揺れが更に身体に鞭を打っていた。ただ、急いで行軍していたお陰で速めに街に辿り着けたのが、彼にとって何よりの幸運であった。

(野宿とかマジで嫌だ...あぁ...疲れたなぁ)
「落ちるにはまだ早いぞ、ケイタク殿」

 寝床の老人のようにぼぉっとしていた慧卓に声が掛かる。アリッサだ。此方も身体を雨粒に濡らしており、ぽつぽつと床に水滴を落していた。それを見て若々しい宿屋のウェイターが悩ましげに頭を振った。御愁傷様である。
 アリッサは続ける。

「まだ夜更けまで時間がある。今の内に知ってもらわねばならぬ事があるのだ」
「それって...授業みたいなもんですか?」
「大当たり。歴史の授業だ」
「うわ...疲れてなきゃバッチグーなんですが」

 疲れている時に頭を使う話をされては眠くなる一方である。せめて暇にならぬようぶらぶらしながら聞こうと、慧卓は心を決めた。
 その時、こつこつと床を軍靴で鳴らして、行軍を指揮していた王国兵の指揮官の男が歩いてくる。行軍の間常にヘルムを被っていたためか、頭皮が濡れいておらず短めの金髪は乾いたままでいた。ちなみに名をハボックという。

「お二人とも、此方が部屋の鍵です、失くさぬように。ケイタク殿は一番奥の部屋、クマ殿の隣の部屋です。アリッサ殿と王女殿下はその向かい側になります」
「有難う御座います。熊美さんは如何されました?」
「先に休みに行かれたようですよ」
「...ハボック殿、貴方も休んだら如何だ?行軍の疲れが残っているだろう?」
「はは...お気持ちは有難いのですが、私はこれから説教せねばならぬ者達が居るのですよ...」
「?誰かな?」

 慧卓が確かめるように親指を後ろにくいくいと指す。窓辺に寄り掛かっていたコーデリア王女を挟み込むように、企み顔で笑みを笑みを浮かべているミシェルとパック両名が其処に居た。

「王女様知ってます?此処って王都の中でも有数の交通の要衝で、物資が一気に集まりやすいんですよ
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