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王道を走れば:幻想にて
第二章、その2:雨雨、合掌
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自分自身が此の世界の現実を良く理解していないだけであろう。彼我の事象に対する認識の差に改めて慧卓は驚きを抱いていた。
 アリッサは宙を見据え、何処か腑に落ちない様子でごちる。

「しかし、妙な死体だったな...」
「どうしたの?」
「...魔獣の仕業としては、あの死体は妙に損壊が小さい方なのです。普通は原型を留めていなくても可笑しくないのですよ?まるで狙いすましたかのように穴が開いていて...もしかしたらと...」
「魔獣の仕業ではない、と言いたいの?」
「...あくまでも唯の推測なのですが、どうにも気になる死に方をしていたので。...それでも、既に死体は獣に貪れております。あれが誰かなどは、我等には特定できぬでしょうな」
「...そう。不運ね、あの人達も。此処で骸を晒すだなんて」
(......えげつない。本当に異界なんだな...此処)

 普通の話のように交わされる凄惨なストーリー。改めて慧卓は彼我の世界の格差に驚きの念を抱き、そしてその中身に思わず顔を青褪めさせた。
 ファンタジー世界における美の部分を、幾多もの動画や画像、そして空想で知ってきただけに、その美の裏に潜んでいるどす黒い穢れには目を瞑ってきたのだ。みずほらしい生活、歴然とした貧富の格差、力無き者への蹂躙、そして人の死に様。商人の想像するに堪えぬ死に様は、夢想を打ち砕くには充分すぎるものである。
 話を聞く内に神妙な顔付きとなり、独り言のように言葉を零す。  

「......『セラム』って、思っていたより厳しい世界なんですね」
「えぇ、人間には人一倍厳しいのです」
「っ、王女様...」

 降り頻る雨から身を守るようにフードを被ったコーデリアが近付く。近くまで迫って漸く、彼女が乗っている馬の足音が聞こえて来た。雨粒を受けて顔に幾筋も水滴が垂れており、まるで涙の軌跡のように光っていた。心を律するような淡い青色の髪は大雨を受けて涼やかに垂れており、まるでそう決まっていたかのように一房となり、鎧に張り付いている。琥珀色の瞳が愁いを帯び、そして慧卓を確りと見詰める。其の様は確かに教会にて厳粛な洗礼を受けた一人の修道女としての凛然とした雰囲気を顕しており、その言葉は有無を言わさぬ圧倒さを帯て、慧卓の心に深く突き刺さる。

「覚えておいて下さい、ケイタク様。世の厳しい自然の摂理を。村で貴方が話していた異界は、とても煌びやかで素晴らしい世界なのでしょう。其処に住まう人々は、私共とは比べ物に成らぬ程幸福な人生を歩んでいるのでしょう。ですが、此処は違います」
「......」
「皆、常に命の危機と隣り合わせであり、いざとなれば己の命は己自身で守らねばならないのです。その結果がどうであろうとも、彼らは最期まで勇敢に、そして純真に生を希求しているのです。どうかこの事
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