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王道を走れば:幻想にて
第二章、その2:雨雨、合掌
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る者にも、人々の視線が殺到しておる。仮に噂が本当だとして、そんな注目の中で事を動かすと思うか?潤沢な資金も持ち合わせぬ少女一人が、唯の反抗期を迎えているのに過ぎんよ。放っておけ...」
「...では、付き人の近衛に関しては如何です?あの者、反帝国派の急先鋒ですぞ。其の上忌々しい事に、白馬の王子と思わせるが如き稀代の美女。一部の臣民から熱狂的な支持を受けており、且つ剣の腕も悪くは無い...これも忌々しい。その気になれば謀反の一つや二つ、起こせるのでは?」
「...確かに、お前の危惧も尤もだ、ミルカ。だがな、この世は民草の泡のような支持だけで、孤高の武人だけでは回せぬのだよ。...危険は無い、放っておけ。...だが、嫉妬するのは勝手だよ。何せ二人とも、とても美しい女性であるからな、ミリィ?」
「っっ、私は断じてそのような事は抱いておりませぬ!!もう私は子供ではないんです!!!」

 可愛げのある綽名を呼ばれムキになってそっぽを向く少年の耳は赤みを帯びており、その横顔は好きな女子に羞恥を覚えた少年のそれに瓜二つである。老人は笑みを深めて言葉を続ける。

「それにミルカ、忘れたか?対策は最初から打ってある。奴等が帰還した際に採るべき最良の手段をな。ほれ、あの騎士は、エルフと昔から仲が悪かったではないか」
「...成程。だからこそ派遣を?」
「そうだ、其の通りだとも。...そういえば今年は暑い日が続いていたな?あの者も何時も鎧を纏って苦しんでおろう。少しばかり休息も必要に違いない、なぁ?」
「...えぇ、心安らげる、避暑地への旅行などが。...これから本格的な夏が来ますから、それに備えなくてはね」
「そういう事だ。少しばかり冷ややかな思いをするくらいが、丁度良い」

 笑みを交し合う二人。腹の黒い視線が合わさり合う。少年はその視線に先の小太りから感じられた紛う事無き敵意ではなく、列記とした大いなる愛情を感じて、心に充足感と情念を抱いていた。男たる象徴である少年の股座の槍が、無意識に鎌首をもたげた。
 其の時、ごろごろと天を震わす蛮声を耳にして二人は窓の方を見遣る。少年がばっとカーテンを開けば、ガラス窓越しに大きく黒々とした大雲が広がっていた。何時の間にやら、天は機嫌を損ねていたらしい。

「...今日は随分と、雲行きが怪しいな」
「そうですね...今にも雷が落ちそうです」

 それを紡いだ瞬間、遠方の雲間にて稲光が走り、十秒ほど遅れて肝を震わせる低音が宙を裂いて飛来した。窓越しの雷光の軌跡を見詰め、老人は静かに告げる。 

「......ミルカ、急ぎ兵を出して街の住民に声を掛けておけ。雷雨が迫っていると」
「承知しました...では私はこれにて、レイモンド執政長官」

 少年は急ぎ足で部屋を出て行き、直後に廊下を疾駆してい
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