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王道を走れば:幻想にて
第二章、その2:雨雨、合掌
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を見せている額に冷や汗を掻きつつ、恭しく目の前の威圧的な男に言う。

「また、火薬についての情報を垂れ込んだ商人は、数日前に仕留めて置きました...奴は存分に、生き血を啜ったようで」
「周辺の住民らに勘付かれておらぬであろうな?」
「魔獣の牙を使った特製の鎌を渡しております。早々に真相が露呈する事は無いかと」
「だが所詮は人の手の仕業。獣よりも劣る力ならば直ぐに見抜かれるだろうさ。無理に人力に拘るから、こうやってボロを顕すんだよ、太っちょ」

 老人の隣より紡がれた高い声を聞き、小太りの男はその正体を忌々しく目端で捉えた。その男、青年と言うには歳をそれをほど重ねていない。どちらかと言うと少年の部類に入るほどの童顔である。丸々とした蒼の瞳と幼さの残る高い声は母性を燻り、艶のある金髪は掌に置くだけでさらさらと流れていくだろう。紛れもない美少年。だが少年をそれに留まらせぬのは、顔つきに似合わぬ侮蔑に歪んだ口の歪み、そして嗜虐的な瞳の光であった。小太りの男と少年の視線が噛み合い、冷たい火花を宙に散らす。
 それを遮ったのは老人の鶴の一声であった。男は慌てて礼を正す。

「何はともあれ御苦労であった。一先ず貴様は草の者を放ち、再びあ奴らを監視しておけ。そして、『セラム』に顕現した異界の者とやらを探って来い」
「承知致しました...長官、コーデリア王女については如何なさいますか」
「あれは血気盛んだが、まだ幼い。奴が真の力を得るまではまだ時間が掛かる。手を出すな」
「御意。では...」

 最後に少年に睨みをきかせて小太りの男はそそくさと部屋を出て行く。老人は一つ息を漏らす。

「ふん...鉄斧の異名を持つ賊であっても、所詮は唯の賊であったか。案外、あっさりと逝ったな」
「...かの者は確か齢五十手前であった、と記憶しています。最盛期をとうに過ぎ、後は朽ちるだけの身でした。切伏せられたのは当然の結果です。しかし...」
「...なんだ?もったいぶらずに言ってみろ、ミリィ」

 少年は其の名を恥らうように照れ臭く笑みを零し、それを引き締め直して、少年なりの生真面目な表情を作り上げる。老人はその些細な努力を内心で愛おしく思う。

「王女の独断行動を放置してよいのですか?昨今、コーデリア王女についてあまり良くない噂が御座います。...奴は、今の王家に、大きな反抗心を抱いているとかなんとか...真実かどうか定かではありませんが」
「...くくっ、可笑しな噂だな?反抗心とは...奴はもう子供ではあるまいし...くくくっ」

 壷に入ったかくつくつと小さく笑う老人を諌めるように、少年は瞳を細めて老人に身体を向けた。

「笑い事では在りませぬぞ。奴が本当に反抗するとなればーーー」
「噂が出る時点で王女に、そして王女と心同じくす
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