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王道を走れば:幻想にて
第二章、その2:雨雨、合掌
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あそこは。其処に住まう彼らは、当に自然の妖精といったところか」
「へぇー...もしかして、耳が長かったりとか?」
「ふっ、流石異界の出身だ。クマ殿と同じでケイタク殿、貴方も察しがいい。そうだ、耳が人間より長い。詰まり地獄耳だ。其の上、やる事為す事すべてが姑息だ」
「...え?」

 剣呑とした言葉に慧卓は思わず聞き返す。アリッサは表面上では笑みを浮かべているが、目には怒りの炎が滾っている。

「まともに剣で斬り合うとせず、只管弓で射掛けるだけ...奴らには正面から啖呵を切る者なんて一人とて居ない。...それに加え、奴等ときたら常に自分達以外の種族を見下している...あいつら、此方が何か言えば直ぐに皮肉で返して馬鹿にする!あぁぁ、思い出してきたら腹が立ってきた!!あの性悪な引き篭もりめ!!」
(なにこの罵詈雑言...どんだけ恨んでいるんだよ...)

 遂には笑みすら消して罵詈雑言を述べ始める始末。余程エルフという民族に恨み辛みがあるらしい。如何なる嫌がらせや屈辱を受けたら此処までの反感を買えるのであろうか。
 このまま会話のペースを任せていたら街に着くまで只管に文句を聞かされそうである。慧卓は危機意識に衝き動かされるままに話を逸らす。

「と、とりあえずエルフはもういいです!耳が長いんですね!で、で、ドワーフはどうなんです?」
「変人変態種族め......ん?あ、あぁ、すまん。ドワーフだが、大陸の南部に居を構えている種族だ。面立ちがとても濃い種族でな、そして代々彼らは総じて膂力が凄まじい」
「その力自慢を利用して王国や帝国に出稼ぎに来てるのも居るわ。多分王都でも見られるでしょうから、楽しみにしてなさい」
「あっ、はい!楽しみにします!」

 アリッサから放たれるびりびりとした空気が和らぐのを感じて安心を抱きつつ、慧卓はまだ見ぬ種族に思いを馳せる。自分達で描かれていたエルフとドワーフと、此方の世界のエルフとドワーフはそれほど見た目に大差は無いらしい。もしかしたら此方の世界に来訪した者が、元の世界へとその存在を輸入したのかも知れない。唯の空想であるが。
 だが話を聞く限り、エルフの方はどうにも性悪で皮肉屋な種族のようだ。それもそれで面白いと、慧卓は内心に呟く。口に出したら矢張り鉄拳が飛んできそうで怖い。
 続けてアリッサは、言葉を濁し気味に言う。

「まぁ、実はもう一種類、人種に似たような奴らがいるんだがな」
「?それは一体?」
「...見た目は人ではないのよ。どちらかというと、獣かしら?」

 熊美が変わって続ける。髪を一気に刈り上げた顔がひょうと上を向いて唸り始める。それは何かを思い出すというよりも、噂話を掘り下げる、或いは知識の箪笥を引き出そうと苦悩する姿であった。

「んん...外観が黒い烏もいれば
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