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王道を走れば:幻想にて
第二章、その2:雨雨、合掌
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双方が戦闘を重ねて疲弊し切った其の時、帝国が大軍勢と共に王国に攻め寄せた。紛れもない外敵の出現に窮した我々は団結、帝国を相手に抗戦を始めた。確か、クマ殿が召還されたのはこの辺りと聞き及んでおりますが」
「...えぇ。視るにも耐えない、凄惨な戦場だったわ」

 その光景を想像してか、熊美は瞳を細めて視線を逸らす。声色も低くなり、その胸に抱かれた感情が窺い知れぬものとなっていた。
 アリッサは泡を弾かせるような情を抑えつつ、淡々と続ける。

「量にも質にも勝り、我等と違って疲弊しておらず、何より連携の強い帝国に抗し切れず、結果としてマイン王国は両陣営揃って併呑された」
(...機を見るに敏な奴が帝国に居たもんだ。最高のタイミングで横合いから思いっきり殴りつけるってさ...)

 現代にて歴戦ゲーを幾年もプレイしてきただけに、然るべきチャンスを掴み取る事の大切さを、データ上であってもよく理解している慧卓は帝国側に感心を覚えた。だがその思いを口に出したりはしない。アリッサに怒鳴られ、もしかすると殴られるかもしれないからだ。鉄のグローブで覆われたパンチを受けたら、じゃがいも以上のブサイクになってしまう。御免被る。

「その後は哀れなものだ。王家を補佐するという名目で帝国側から神官や宦官らが派遣されて、敢無く政治中枢を乗っ取られた。そして今では、この国は実質的に帝国の傀儡国家と成り果てている。王国は負けたのだ、完全にな」
「...敗北ですか」
「あぁ、完敗だよ。王国の名誉と誇りの象徴である騎士団が解散されなかったのが不幸中の幸いだ。これはクマ殿を始め、戦乱で騎士達が大いに暴れた事によるでしょうな」
「それもあるかもしれないわ。でも本音は、騎士団も解散してしまったら、今度こそ王国が徹底抗戦をするという予感めいた危惧が帝国側にあったからでしょうね...。自暴自棄になった兵士が、民草に隠れて帝国に抗戦するっていうのは、本当に辛いものよ。双方にとってね」
「...私はそれでも良かった。帝国に屈服するなんて、何時までも耐え切れるような屈辱ではない」
「アリッサ、それは言っちゃ駄目よ。貴女は王国が負けた時にまだ生まれてないのだし、なにより今、貴女は騎士なのよ。自分の感情を抑制して、今の王家に奉公するべきじゃないの?」
「...そうですね、失言でした。お許しください」

 自らより遥か昔、一人の騎士として存在していた熊美にアリッサは頭を下げた。熊美は手を上げてそれを制する。 
 慧卓は熊美の逞しい背中を横目に、アリッサに再び尋ねる。

「纏めるとこの大陸は実質、帝国の支配下にあるという事ですか...それで他の民族は?」
「...北方に住んでいる、エルフ民族。北嶺は鬱蒼とした森林が広がり、また高い山岳が連なっている。雄大で神々しい風景だよ、
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