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王道を走れば:幻想にて
第二章、その1:門出
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慧卓とアリッサが見えて来た。熊美が嘆息を漏らし、跨っていた馬を彼らへと近づけていく。

「全く、とんだお調子もんめがっ!」
「そりゃアリッサさんも似たような感じですよ!」
「何処がだ!?私の何処がそうなんだっ!!」
「酒飲んだら一気にキャラ崩壊する所とかでしょ!?」
「あっ、あれはだなぁ、不可抗力というかーーー」
「二人とも、最後くらいきりっとしなさい、王女殿下の御言葉よ」

 二人は口を噤んでその歩みを熊美の近く、村の出口の間近にて止まらせる。
 コーデリアは並居る兵達の視線を一身に浴び、そして村人の見送りの瞳を受けて、堂々と胸を張って馬を進める。そして、衆目を集めるように村の中央部分まで進んで、大声を張り上げて謝辞を述べた。

「村の皆様っ、長きに渡り我々と共に日々を過ごしていただきまして、このコーデリア=マイン、そして兵士共々、誠に感謝しております!!これより我等は王都へと帰還致しますが、皆様と過ごした尊き日々は決して忘れません!!本当に有難う御座いました!!!」
『ええってことよおおおお!!!!!』
『また来てねぇぇっ、王女様ぁぁぁっっっ!!!』
『御達者でぇぇぇっっ!!!』

 村の人々の叫びに、一切の害意も見て取れない。若きも老いた者達も手を振り、口々に惜別の言葉を木霊させた。寂しさを紛らわすような朗らかな笑み、そしてそれ以上に王女を慕う温かな笑みを浮かべて、彼らは真っ直ぐにコーデリアを見詰めていた。コーデリアは言葉を返さず、大きく手を翳して言葉を受け止める。彼女の顔にも、村の人達の温厚な見送りに喜びを募らせて、優しげな色が浮かばれていた。
 そして彼女はそのまま馬首を返し、指揮官に向かって大きく手を振り下ろした。

「出立です!!!!角笛を鳴らしなさいっっ!!!!!」

 指揮官の傍に控えていた兵が、白地の角笛を手にとって大きく息を吹き込む。途端に、まるで龍の咆哮のように雄雄しい重い音が宙空に大きく広がる。耳を打つのではなく、身体を揺さぶるような音である。
 その音と共に、兵達が一糸乱れぬ動作で以って身体を村の出口へと向けて、指揮官の先導の下、泰然とした行軍を始めた。彼らの出立に合わせて、村の者達が今まで以上に声を張り上げて別れの言葉を掛けていく。兵の幾人かがこれに応え、叫び染みた返答を返している。
 慧卓等も出立しようと、己の足を準備していた。アリッサは澱みの無い動作で馬に跨り、周囲を困惑して見渡す慧卓に向かって鋭く言う。

「さっさと準備しろっ、置いて行くぞ!」
「おっ、おい!俺馬乗れないぞ!どうしろっていうんだよ!」
「じゃぁ私の後ろに乗りなさい、ほらっ、急いでいるんだから」
「ちょっ!?襟首掴まないで下さい!」

 服の襟首をむんずと掴まれ、慧卓は熊美の背中へと落とされた。這
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