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王道を走れば:幻想にて
第二章、その1:門出
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根が黒点を浮かばせていた。

「動いていると邪魔だからね。一気に切ったのよ」
「だからって全部は無いでしょう...すいません、熊美さんって何歳でしたっけ?」
「レディーに歳を聞くなんてデリカシーの無い子ね」
「レディーじゃなくて、漢なんでしょ?何歳です?」
「52よ」
「あぁ...成程。どうりで地獄の監獄を制圧する英雄の様な風貌をしていると思ったわ...」
「あらやだ。私まだまだイケるって事じゃない」

 二人は歩みを進めながら話す。

「それと服装なんだけど、こっちの世界に合わせたのよ。貴方も成るべく早く服装を整えた方が良いわよ?」
「えっ、なんでです?これ結構動きやすくて良いんですよ?」
「残念ながら、それでは少々問題なのです」

 二人がその声に目を向ける。本邸の扉の前に、コーデリアが礼儀正しく立っていた。熊美が頭を垂れて挨拶を述べる。

「王女殿下、お早う御座います」
「お早う御座います、クマ様」

 コーデリアは晴れやかな笑みでそれに返し、より深い笑みを浮かべて慧卓を見詰めた。ぞくりと、慧卓の背筋が冷ややかな視線に凍てつく。

「昨日は、とてもとても、お楽しみのご様子でしたね、ケイタク様?」
「...あれ?王女様、何か怒っていらっしゃいます?」
「あら、何の事でしょうか?昨夜の宴で心愉しませる事はあれど怒るような事などありませんよ?それとも、ケイタク殿に何か心当たりがあるのでしょうか?お酒を沢山飲んでいらしたから、まぁ一つや二つはやってしまったのでしょうね...うふふふふ」
「いっ、いいえ!昨夜は本当に愉しい宴でしたねー!あははは...」

 乾いた笑みを浮かべた慧卓は目の前の女に恐れ戦いて彼方に視線を飛ばす。その女性はまるで雪原の吹雪の如き冷ややかな瞳で慧卓を反目で見据えていた。決して睨んでいる訳ではない。見詰めているだけだ。だが慧卓にとってそれは睥睨以上の何者でもなかった。
 慧卓は話題を逸らそうと気丈を振る舞う。

「で、な、何が問題なんでしょうか?」
「そうですね、クマ殿は大体察しているでしょうが、これから我が軍は王都の方へと帰還しなくてはならないのです」
「えっ、もうですか?まだ山賊退治から一日しか経ってないんじゃ...」
「いえ、山賊の実態を探るのに此処を拠点として既に一週間は経っているのです。これ以上村に駐屯の負担を強いる事は認可出来ませんし、何より兵達の心に欲求不満が溜まる頃合です。宴で少しは解消しましたけど、それでも早く家に帰らせてあげないと」
「仰る通りです。慧卓君、分かりやすく言えば、任務が終わって饗宴でストレスを吐出したから、もう帰りましょうって事よ」
「は、はぁ...そういうもんなのですか。てっきりもっと長く居るかと...」

 理解出来なくはない
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