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王道を走れば:幻想にて
第一章、終幕:ストレートアッパー、イン饗宴
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付ける。

『一気、一気、一気、一気、一気、一気!!!』
「くそっ、このノリはここでも通用しているのかのよっ!!!
「後で介抱してあげるから、やっちゃいなさい」
「あぁもうっ!熊美さん、頼みますよ!!」

 慧卓は据わった瞳をして一瞬憎憎しげに赤の湖面を見据えた後、躊躇いを消し去るような凄まじい勢いでそれを煽った。周囲の者達が拍手喝采を上げて彼の勇気を湛える。慧卓は自棄になった意識の中、焼け付くような酒の熱さを喉に感じ、噎せ返るようなアルコールの臭いに目を眩ませる。だが、途中でやめればそれこそ男の恥だ。慧卓は震える両手でジョッキを掴み、どんどんと中身を煽っていく。まるで砂漠で流浪した貧者がオアシスの水を嚥下するかのように、躊躇いも後悔も無い、神秘的なまでの姿である。慧卓がその最後の一滴を飲み干すと一際強い歓声が上がり、アリッサが咳き込む慧卓の背をばしばしと叩いて誉めそやす。

「やるじゃないか!見た目からしてモヤシっぽい奴だと思ってたけど、案外根性据わってたんだ!いやーすごいわー、アハハハ!」
「......かっ」
「アハハハ、あへ?」
「見てて面白いのかあああああっっっっ!!!!!!!」
『うおおおおっ!?』

 突如として激高する慧卓に諸人は驚く。慧卓の瞳は明らかに酔いに据わり、咽喉は酒に侵されて息臭くなっていた。まるで蛇のような鋭い眼光を放ち、慧卓は正常な判断がつかぬ意識の中でアリッサの顔を掴むと、無理矢理に酒樽に突っ込ませる。

「ぶおおっ、んごっ、んっごぉぉ!?!?」
「アリッサさぁぁんっっっ、一気飲みは死んじゃうんでずよ”お”お”お”!!!」

 二人の酒乱の醜態に諸人は再び溌剌とした笑い声を漏らす。誰も止めようとはせず、宴の華に愉快な気持ちを抱いていた。
 一方で保護者の立場ともいえる熊美は引き攣った顔をして慧卓らの激しい動向を見詰めていたが、思い出したかのようにコーデリアに視線を配って深々と頭を下げた。

「...殿下、私の連れが粗相を起こしまして、申し訳御座いません」
「クマ殿。今宵は祝勝会である以上に、愉しい愉しいお祭りなのです。沢山騒いで、遊んで、みんなで笑うのが一番です。ですから、彼をとやかく言う必要はありません」
「...分かりました」
「でもアリッサに関しては在りますね。あの人のせいでケイタク殿が暴走してしまったんですから。本当、酒が入っちゃうと自制が出来ぬ人なんですから...ふふふ」
(目が笑っていない...怖いわぁ...)

 冷ややかに笑みを零すコーデリアの瞳には一分の温かみも、ましてや好意の色も無い。まるで酒乱で浪費癖の父親を見下すが如き視線、如何様にも修正し難い阿呆を見る視線である。瞳からハイライトが消えているのではなかろうか。傍から見ればなんと背筋を寒からしめる
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