暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
第一章、その6:血潮、ハゲタカの眼下に薫る
[1/11]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
『我が武勇と山賊の誇りを賭けて、豪刃の羆殿、尋常なる一騎討ちを願いたいっっ!!!!』

 高々と張り上げられた名乗りに、そして一騎討ちの願い出に諸兵らは困惑を抱いてそれぞれの陣営ごとに固まっていく。血気に猛る兵達であっても、己より明らかに膂力に優れる者を見れば、その戦意も萎縮せざるを得なかった。大して賊徒達は何の脈絡もなく、ただ突然と一騎討ちを申し込んだ己の棟梁に驚く。
 そしてその両者の視線を一身に集めるのは何も山賊の棟梁、カルタスだけではない。彼に指名された熊美はそれ以上の注目の対象となっていた。三十年前に顕現した異界の猛き戦士、『豪刃の羆』。時を経た今の姿を見て、兵も賊も驚愕に胸を騒がせて口々に言い合う。

『おい、本物か?本当にあの方なのか?』
『なんか変なもん着てるから本当だろ!昔顕現された時もそうだったらしいけどな!』
『今時の若いモンは外見で判断するのか!?こういうのは雰囲気で悟れ!見よ、あの男だか女だか分からん意味不明な闘気を!あれは本物の羆殿だ』
「ほぅ...随分な命知らずが居るらしいわね?結構、結構...」

 熊美は額に青筋を立たせてひくひくと痙攣させる。それでも憤懣たる思いを抑えてカルタスの叫びに傾聴する辺り、場の雰囲気を掴んでいるといえよう。カルタスは胸を張り上げて叫ぶ。

『寛容な心をもちてこの申し出を受け入れる事適うならば、勝敗に関わり無く、我が山賊団は王国の威光の前に膝を屈そうっ!!!』

 その一声を聞いて兵達は尚一層の驚きの表情を浮かべ、山賊らは矢張りとばかりに諦観の息を漏らす。
 未だ抵抗の動きがあると思っていただけに兵達は動揺を覚えざるを得なかったが、大して山賊らは交戦の最中に何処か諦めめいた気持ちを浮かべていたのだ。数は負け、兵士の質も、武器の質も負けている。加えて情勢を打破できる秘密兵器も、ただ一人の青年の機転により為すがままに山賊らの寿命を縮めるに至らしめていた。事此処に至っては、棟梁の一騎討ちにより雌雄を決するのも一つの慈悲であろう。そんな思いも芽生えていたのだ。

『王国軍よ、羆殿よ、返答やっ、如何に!?!?』

 裂帛の如き一声が宙を裂き、改めて人々の関心を惹きつけた。互いの顔を見合わせてそれぞれの思いを探る兵達の後方から、蹄が地面を鳴らして近付く音が聞こえる。見遣れば、アリッサを護衛として引き連れたコーデリアが馬を進ませており、其の隣には確りと指揮官の男の姿がある。兵達の間にて馬を止めて、コーデリアは凛々しい声で言う。

『...我はマイン王国第三王女、コーデリア=マイン也!!』
「あっ、コーデリアってあの人か...綺麗だな」

 海のような色をした軽やかで淡い髪の毛、陶磁器のような美白の肌。そしてそれらを彩るは教会の鐘の音の如き凛々しい声と、煌びやかに作ら
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ