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王道を走れば:幻想にて
第一章、その6:血潮、ハゲタカの眼下に薫る
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らの捕縛、砦の完全な制圧へと動き出して行く。熊美らを包囲していた円陣も解かれて、カルタスの亡骸を兵士らが丁寧に運び出して行った。神官は深々とコーデリアに礼をすると、戦闘の後始末に追われて慌しくなる砦から背を向けて、そそくさと外へと足を運んでいく。
 額の汗を拭っていた熊美に、何時の間にか木壁から降り立った慧卓が近付いて労いの言葉を掛けた。

「お疲れ様です。見た目通り、貴方って物凄い強いんですね」
「当たり前よ。心身ともに充分に鍛えられなければ、漢を名乗るに相応しいとはいえないでしょう」
「まぁ、そうですね。流石に剣まで扱えるとは予想外でしたけど」

 苦笑気味に言う慧卓はちらりとカルタスの死骸へと視線を走らせた。

「満足して死にましたか?あの人は」
「そうだといいんだけどね。...あの人、昔の私を見て武道を進もうと決めたんでしょうね。すくすくと、純真に武に心身を費やしてきて、只管に道を歩んできた」
「それが今では山賊で、決闘の敗北者ですか...世知辛いですね」
「クマ殿、ケイタク殿」

 二人は声をした方に振り向く。馬に騎乗したコーデリアがアリッサを伴って彼らに近付いてきた。熊美が彼らに刃を向けぬよう、大剣を逆手に持った。コーデリアが馬上より声を掛ける。

「私は、グスタフ=マイン王国第三王女、コーデリア=マインです。此度は我が臣下、アリッサ=クウィスを救っていただきまして有難う御座います。加えて、砦の攻略も手伝っていただき、感謝の言葉もありません」
「殿下、私はヨーゼフ=マイン国王の臣下、黒衛騎士団団長でした、クマミ=ヤガシラであります。我ら王国の戦士にとって、殿下の御言葉はまさに神の寵愛の如く尊く、有難き事。御言葉をいただきまして、誠に感激であります」

 一礼をして熊美は言葉を述べる。背筋をきりっと伸ばした泰然たる一礼である。コーデリアがそれを見届け、そして微笑を浮かべながら慧卓を見詰めた。慧卓の心に大きな緊張の波が走る。 

「そして、貴方がケイタク殿ですか?」
「...はっ。私は御条慧卓であります。微力では在りましたがクマ殿とアリッサ殿に協力致しておりました。また、王女殿下からお声を掛けられる名誉に預かりまして、大変光栄であります」

 妙にかくついた動きで慧卓は膝を突いて頭を垂れる。王女と騎士なら普通はこういうもんだ。思うが侭の臣従のポーズを取る慧卓。それを熊美が半ば呆然として見遣っている。 

「...ぷっ、ぷふふっ」

 始め目を真ん丸とさせていたコーデリアが耐え切れぬとばかりに口元に手を当てて、くすくすと笑い声を漏らす。何が可笑しいか理解出来ぬ慧卓の前でアリッサもまた笑い声を漏らした。

「でっ、殿下、駄目ですよ...くくく、笑っては、くくっ!!」
「そ、そういうアリッサも、
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