第一章、その6:血潮、ハゲタカの眼下に薫る
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に目を遣った。隆々と張った胸部に、先に叩き折られて奪われた、斧槍の斧が深々と突き刺さっていた。刺さった部分から鮮血が漏れ出しおり、艶やかに光り輝く刃を紅に染め上げ、地面に点々と斑点を作り上げていく。意識を焼き切るような灼熱が胸部の奥、刃が穿った肉の層と臓腑から感じ、流血をより鮮明に意識させた。呆けた表情で再び顔を上げると、熊美が物を振り投げた格好で己を見据えている事に気付いた。
「......ごはっ...かぁ...」
カルタスは槍を必死に握り締めて、ゆっくりと歩を進める。胸部からの血潮に腹部が、腰部が血濡れに変じていく。喘ぎを漏らすように口を開けて、嗚咽のような息を吐いて歩を進める。そして数歩を時間を掛けて進んだところで、崩れ落ちるように前のめりに倒れ込んだ。倒れ込んだ衝撃で斧がより深くへと食い込む。喘ぐように何度か息を零した後に、カルタスの咽喉が動かなくなる。
熊美は警戒した様子を見せて大剣の下へと歩みを進め、それを掴み取る。其の間、終ぞ、カルタスが微動だにする事は無かった。彼の身体の下に鮮血が池を作っていく。熊美は一つ息を吐くと、剣を両手掴み、それを掲げて厳かに言う。
「我、此処に勝利の栄光を主神に捧げん」
言葉と共に、大剣に象られていた赤光が、カルタスの胸に突き刺さっていた斧の光が煌き、弾け飛ぶように霞となって雲散霧消する。広間に無言が流れ、諸人は息を呑んで決着を見届けた。地に伏せるカルタスの瞳からは生気が消え失せ、体躯の下に血が濁流のように溜まっていた。
熊美が軽い息を漏らし、声を張り上げて賊徒らに言う。
「如何するかな、賊徒達よ。まだ抵抗するというのなら、相手になるぞ」
堂々たる視線を受けて賊徒らは硬直する。熊美の瞳は未だ戦意に昂ぶっており、大剣は鈍く光沢を放っている。それに己の血液と臓腑を吸われると想像すると、賊の面々は顔を青褪めさせて言う。
「...こっ、降伏だ...降伏する!」
「そうだっ、俺達は、武器を捨てるっ」
「...頭も死んだから、俺達は追従する必要が無い。それに、誓約は絶対だ」
「『決闘の誓約』の名に於いて、俺ら一同は王国軍に降伏する」
山賊達が己の得物を地に捨てて、観念の意を挙げて両手を上げた。コーデリアはそれを見て鷹揚に頷き、指揮官に言う。
「彼らを捕縛しなさい。しかしまだ抵抗するのならば、斬りなさい」
「承知致しました。では殿下、私は砦内の火薬の方を調べて参ります。殿下におきましては逸早く、村へとお戻り下さい」
「えぇ、此度の活躍を湛えるよう、宴の準備でもしておきましょう」
「は、有難う御座います!では殿下、近衛殿、神官殿、これにて!」
「あぁ、ご苦労であった」
指揮官が馬を進めて声高に命を下す。それに合わせて兵達が一斉に動き出し、山族
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