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王道を走れば:幻想にて
第一章、その6:血潮、ハゲタカの眼下に薫る
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ふふ、笑っているではありませんか...!」

 眼前で毀れるように笑みを浮かべる二人に理解が及ばず、慧卓はおずおずと声を掛けた。

「あ、あの、私何か間違いでも?」
『おい、あの白いの見てみろよ。戦場で跪いてるぜ』
『すげぇなぁ。敵に背を向けて膝付いてるよ。よくあんなこっ恥ずかしい事が出来るよな』
『ほんと、ほんと。ひょっとして王女様に遭えて感激してんじゃねぇの?』
『それでも凄いっつうの!ああいうのは純朴すぎるか、よっぽど馬鹿なのか、どっちかさ』
『『『だな!!ハハハハハ!!!!』』』

 背後から掛かる兵士達の声に納得がいく。仕事は最後まで油断せずに完遂しろという事なのだろう。故に、最後に至って反抗するやも知れぬ賊に背を向けて、あまつさえ膝を地面に突く慧卓は滑稽であり、無知であるというのだろう。慧卓の顔に一気に羞恥が込み上げてきた。

「あー、慧卓君。あんまり気にしちゃ駄目よ?貴方が此の世界に無知なのは仕方の無い事なんだからーーー」
「俺...馬鹿なの?」
「知らないわよ」

 熊美の投げ遣りな突き放しに慧卓はがくりと肩を下ろした。其の様子をコーデリアとアリッサが和やかな表情で見守っている。

「面白い人達ですね、彼らは」
「えぇ、とても陽気な方々ですよ」

 燦燦と輝く太陽が真上へと差し掛かる。からからとした日差しを浴びて、地面に撒かれた血潮は徐々に乾き、人々の肌に水玉を浮かせていく。一つ、緩やかに靡いた順風を浴びて、宙を舞っていたハゲタカが降下を始めていく。眼下の大地に倒れ込む死骸を見詰めて、高い鳴き声を上げた。



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