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王道を走れば:幻想にて
第一章、その6:血潮、ハゲタカの眼下に薫る
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れた純白の鎧。慧卓は現世に舞い降りる天使の如き可憐なその者の姿に、思わず見惚れてしまう。
 コーデリアは続けた。

『数々の狼藉を働きし山賊の棟梁の言葉、果たして信ずるに足るといえようか!?』
『誓う!!我、鉄斧のカルタスは王国の樫を仰ぐ者として、亡きクウィス男爵殿の名誉にかけて誓う!正々堂々と、戦士の武技によりて尋常なる勝負をすると!この誓約を霊魂に刻むものである!!!』

 クウィス男爵、そして誓約。其の言葉が走った途端にアリッサの表情が一気に鋭くなり、諸兵らに波を打つような静けさが走る。心成しか、山賊達の幾人に至っても鋭い視線を棟梁に向けている。困惑に満ちた雰囲気が、一気に殺気染みた緊張感へと変貌し、光景を眼下に見下ろす慧卓に鳥肌を立たせた。
 慧卓は急な空気の変容に戸惑い、一縷の怯えを抱きつつも一つだけ理解できる事があった。口走った二つの言葉に込められた思いは、自分が想像できぬほどに重く、彼らの心を捉えているのだ。まるで足枷に嵌められた鉄球のように。 

『我は豪刃の羆、クマ也!!』

 熊美の雄雄しい叫びに諸人の視線が集まる。其の声は、性別を曖昧に装った理解の及ばぬものではない。一介の勇士の如く猛々しく、出陣の角笛の如く高々と張り上げられたものであった。

『我が武勇の名誉と騎士の誇りに誓い、この勝負、相受けたいと願う!殿下よ、返答や如何に!!』

 両者の闘志は此処に相交えた。後は許しを待つのみとなり、両者は視線を其方へと向ける。コーデリアは逡巡しながら指揮官に問う。

「...この決闘、どう思います?」
「受けて宜しいかと。幸いにして賊徒共も動きを止めています。部下を使って彼らを目の届く所へと誘導し、勝負が付き次第一気に捕縛致しましょう。砦の内部は一騎打ちの間に制圧させる事もできますが」
「既に制圧は半ば完了しています。此処まで来ておいて、態々卑劣な手段で勝利の美酒に泥を混ぜなくてもよいでしょう」
「言葉が過ぎました。お許しを」

 コーデリアは鷹揚に頷き、背後を振り返って言う。 

「...神官よっ、かの者共に決闘の呪印を結ばせよ!」
「円陣を敷け!」
「円陣を敷けぇぇぇっ!!!!」

 コーデリアの言葉に続いて出た指揮官の言葉、それに続いた鬼の小隊長らの大声に兵達は脊髄反射の如く反応し、広場の中心に大きな円を開けるように展開していき、コーデリアらが居る方向には一つの道を開いていく。砦の外に溜まっていた兵達もまた内部へと足を踏み入れていく。円を展開する兵以外の者は、壁際や木壁にて硬直していた山賊らへと瞬く間に近寄り、牽制の刃と視線を向ける。賊徒らは反抗するような視線で之に応えたが、やがてどうにもならぬと悟ったのか、視線を円の方向へと戻した。
 コーデリアの背後より、一人の老人が現れてき
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