暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
第一章、その3:オカマっていうな
[1/15]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 朝焼けの眩さが鬱蒼とした森林を照らしていく。『セラム』に明るい暁が訪れた。まるで笠の様に木々に生える青々とした葉っぱには、冷たい朝焼けの霜が降り立っており、一つ軽く靡いた風に水滴を落していた。樹木の根元に生えている小さな花、或いは傘を張った茸にも可憐に水気が帯びており、その慎ましい姿に色を添えていた。暁の到来に合わせて小鳥がちゅんちゅんと囀り、枝に足を着けて天空を、そして大地を見遣っている。その小さくも鋭い眼光の中に、一つの人間の集団を捉えて小鳥はまた囀りをする。その集団の多くは野蛮な風体をしており、乱暴に自然に覆われた大地を踏み抜いて行進していく。その者達に包囲されるように、慧卓ら三者が歩いていた。
 教会の地下道にて逃走を試みた慧卓ら三者は、地下道内にて野蛮な者達に包囲されて捕虜の憂き目と遭ってしまっており、今彼らは野蛮な風体をした者達に包囲されながら地下道を抜けて山中へと足を踏み出していたのだ。彼が歩んでいる其処は、自然の摂理が如実に現れた場所でもあった。
 地面の起伏は所々で激しくなり、1メートル規模の瘤のように出っ張った地形も珍しく無い。所々で突然と姿を消すように大地が凹み、小さな石ころが折れた枝に混ざって転がっている。水色の優美な花が大きな岩に隠れるように身を潜め、異臭を放つ狼か何かの獣の死体に蛆が群れ、蝿が飛び交っている。
 だがその一方で人の手が加えられている部分もある。獣道にも似た一本道が整備されていたのだ。視界の確保のためか山中を通る一本道を中心に樹木が伐採されており、障害物の姿は何一つとして存在していない。ただ茶褐色の道が続いていくだけだ。
 野蛮な男達はその道を堂々と歩いていく。まるで自らの縄張りであるかのように邁進する。慧卓は山中を歩く事にそれほどの難を来さなかったが、矢張り長時間の山歩きは堪えるものがあった。始めは余裕綽々といった様子で連行されていた慧卓であったが、数十分も山中を登り続ければ次第に無口となり、息も荒げてくる。

「俺達、何処に向かってんだ」
「黙ってついて来い」

 ふてぶてしい猪のような顔付きの男に睨まれ、慧卓は口を噤んで歩きに専念しようとし、慧卓は改めて彼らの装備に目を配った。
 動物の皮を剥いでなめしたか、彼ら一同皮の鎧に身を包んでおり、幾人かは明瞭な力関係を誇張するように、蛇の抜け殻や、小動物の頭蓋で作り上げた首飾りをしている。慧卓の浅い知識では彼らがどのような風習の元に生きているかは理解できなかったが、その集団の嗜好は直ぐに理解できた。彼らはいたく、威圧的に、暴力的に生きるを良しとする人間なのだ。
 それを象徴するように先ず目を引くのは血の穢れが拭い落とせていない鉄剣の数々。刃渡りは80センチはあろうかという片刃の曲剣、そして両刃の直剣。幾年も度重なり使用されたのか、赤錆が刀身に浮
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ