第一章、その3:オカマっていうな
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「おっ!?御条か!おーい、御条!!」
「ん?」
聞き覚えのある声に慧卓はスクランブル交差点の右方へと頸を向けた。猪村が走ってくるのが見える。堅実でカジュアルな私服に身を包んでいる。
猪村が近付くにそれ、その切れ長の瞳に焦燥の色が現れているのを見遣り、慧卓は僅かに表情を引き締めた。
「猪村じゃないか!どうしたよ?」
「なぁ、三沢見てないか?さっきはぐれて、見つからないって事で探してんだけど」
「三沢?いや、まだ見てないけど」
「そうか、って事はそっち方向じゃないってか?うーん、弱ったなぁ」
猪村は遠くを見通すように周囲を探る。其の様子を見て心配になったのか、慧卓が真面目な表情をして尋ねた。
「どういう経緯で逸れたんだ?迷子?」
「いや、ビリヤード終わってさぁ、次の遊び場って頃にな、三沢が居なくなったのに気付いたんだよ。んで大変だって事で面子解散して暇な奴が手分けして探してるってわけ。いや困ったな・・・最近物騒になったから心配だよ・・・」
「・・・なぁ、俺も手伝おうか?」
「マジで!?いいのかよ?」
「丁度用も終わって暇してた頃だしな、手は丁度空いているってわけだ。それに、友達が困っているな助けてやらないと、な。それとも、俺じゃ頼りないか?」
「いや、全然助かるわ、マジ有難う!!!なんで中心街に居るのかわかんないけど、とにかく助かるぜ!!んじゃお前は中心街の西通りを頼むわ、俺東をもっぺん探すから!」
喜色で顔を綻ばせて猪村は再びスクランブル交差点の東へと姿を消した。彼の颯爽とした姿を人々がちらりと見て、視線を元に戻す。幾人か、特に若い女子は釘付けとなったままであったが。
(流石イケメン、絵になるな)
その背中を見送り西方へと足を向けつつ慧卓は三沢の面立ちと性格を思い出しながら声を零す。
「三沢か。大丈夫かな」
彼女の笑みは当に『にへら』という擬音がつくほど柔和なもの。普段よりぼーっとしている事が多く、加えてトレンドマークのその掴み所の無い笑みと可憐な容貌によりクラス内の癒しキャラとなっている。
「けど友達放っぽり出して遊びに行くほどツレない奴でもないし・・・」
少なくとも慧卓の中での三沢は、友人との興を放棄するよりかはその興に熱を上げるを良しとする者である。猪村達との遊びを放棄する事など考えられなかった。
結局の所、三沢は理由も分からずに逸れてしまったという事とに変わりは無い。手掛かりもなく、困りながら西通りを歩く慧卓の目に二人組みの者が移りこむ。
「ペチャクチャペチャクチャペチャクチャペチャクチャ」
(ん?三沢か?)
「ん?」
二人組みのうち一人、男が慧卓を見詰める。髪型がコーティングされたかの如く先端が尖り、顔の中心に耳と髪の毛以外の顔
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