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王道を走れば:幻想にて
第一章、その3:オカマっていうな
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卓は同情の念を禁じえず、その原因であろう同伴者、熊美に問う。

「熊美さん、森の中で、一体あいつになにやったんだ?」
「あの子に?うふ、顔をぐいっと近づけて、ちょっとお尻をスリスリしたのよぉ」
「うわぁ・・・それトラウマになるでしょ・・・」
「トラウマになるくらい私がケダモノに良く似た野蛮な容貌だと言いたいのかしら!?」
「いいえ!!!そのような事は決してありません!!」

 突如として変容した熊美の形相を見て反射的に慧卓は叫びを返す。熊美から目を逸らし、慧卓は大きく嘆息した。

「くそっ・・・まさかこんな事になるなんて・・・」
「・・・そういえばケイタク殿、でよかったかな?ケイタク殿はどうして此処にいるのだ?」
「そりゃあなたに巻き込まれたからですよ!?」
「あっ、ああ!すまなかった!言葉を間違えた!ケイタク殿はどうして、クマミ殿と一緒にこの世界に来たのだ?」

 慧卓はアリッサに視線をやると、前置きするように返す。

「話は長くなりますよ?」
「当分、賊の頭は来ないわよ。上で酒盛りをしているみたいだから」
「え?上って、岩盤ですけど」「ええ。それを貫いて聞こえるの。分からない?」
「・・・で、俺の話なんですけどね」「スルーって悲しいわ」
「これがまた大変なんですよ・・・」「そ、そうなのか」

 熊美をあっさりとスルーした事にアリッサは驚いているようだ。彼女にとって話を無視することなど出来ぬ、重要な人物なのだろう。だが慧卓にとっては巨体で、命の危機にあっさりと飛び込んでいく肉体・精神逞しいオカマでしかない。野獣めいた眼光をする訳でもないし、特に恐れる必要は無いのである。
 慧卓は疲れが滲んだ口調で始めた。

「話は、俺が勤め先での仕事を終えた所から始まります」


ーーーーーーーーーー



「今日は愉しかったわよぉ、またね、坊や」
「ほんとよねぇ、下戸に優しくてそれでいて愉しいお店ってそうそう無いわよ。今後、此処を贔屓にするわ」
「そうね、他の皆を連れて来て宴会をするってのも一興だわ。あの坊やを肴に、ね」
「今日はご馳走様でした。今度は私達のお店にも遊びに来てね」
『ありがとうございましたー!!!』

 溌剌とした声を背に受けて、奇奇怪怪・面妖な者達が腰を強調させながら店を後にする。皓々と光る夜の勤木市の繁華街の中を歩く彼らは、まるで宙を漂う蛾、否、蝶のように煌いてみえた。道中で擦違う人々が彼らを避けているようにも見える。
 彼らを見送った店員、御条慧卓と同店でバイトをしている実晴は笑みを湛えたままBARの店内へと戻り、『Close』の札を扉に付けて深い息を漏らし合う。

「ふぅ・・・一時はどうなることかと・・・」
「本当よ。あの熊美って人、無駄に逞しい肉体でアピールし
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