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王道を走れば:幻想にて
第一章、その3:オカマっていうな
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「はっ?」「あら、髪飾りが?」

 疑問に思う二人を他所に、髪飾りは光の度合いをより濃厚とする。その勢いに眩さを感じ始める直前、髪飾りの光が一気にどす黒く変色し、大きな球体を顕現させて二人を包み込んだ。深海の底から宇宙の深層に至るまでを支配する漆黒は、二人を飲み込んだ事を機とし、押し潰されるかのように一気に収縮し、大気の中に姿を消した。後に残るは膨張の残滓、きらきらと光の粒が宙を煌くだけである。その粒もまた煙のように立ち消えとなり、まるで何も無かったかのように透明となって消滅する。住宅街に元の静謐が戻った。
 一方で球体に飲み込まれた二人は、現実のものとは思えぬ不可思議な世界に身を包まれていた。光点一つ無い漆黒の世界、だが光のなきそこでは不思議と自分達の姿がやけにはっきりと浮かんでいた。その中で波に攫われたかのような奇妙な浮遊感に包まれている。つい先程まで感じられた己の重みを感じる事が無い。今自分達は浮上しているのか、それとも落下しているのか区別がつかない。実に理解しがたい世界を慧卓は驚きの視線で見詰め、熊美は半ば悟ったような色を瞳に浮かべていた。
 そして自らを包み込む漆黒のベールを抜け出しかと思いきや、彼らを深い藍色の世界が出迎える。周囲一面を光陰の如き速さで色鮮やかな線が駆け抜けていく。針葉の衣、土煙の靄、稲光の轟き、吹雪の豪風、そして溶岩の灼熱。自然に君臨する大いなる地球の神秘が二人を歓迎するように出迎え、早々に漆黒の世界へと向かっていく。まるで円筒の中を潜っていくかのような感覚である。
 其の時、二人の意識を惹き付けるかのように鋭い声が世界の中を反響した。

『さっさと出んか、このケダモノがぁぁ!!』

 罵声によって一線を越えたのか、藍色の世界が突如として元の漆黒に変貌し、段々と体躯を包み込んでいた浮遊感が消え去っていくのを感じる。
 そして、水面に足を着けたかのように身体が一気に沈み込み、二人の身体に重力の感覚が戻ってくる。瞬く間に視界を覆い尽くしていた漆黒が晴れていく。其処にあった風景を見て慧卓は絶句を禁じえなかった。
 其処にあったのは、鬱蒼とした大自然の調和であった。森林の偉大さと、宇宙の雄大さである。二人の周りを覆うのは聳え立つ木々、加えて枯葉と草むらの絨毯である。人の手が加えられていない木々の高みは十メートル以上もあるのではないか。そして上を見れば深き枝木の間から、不可思議な事に、神秘な光の海が広がっていた。つい先程まで消えていた煌煌とした海星が現れている。
 唐突に、連続して起こった事態に理解ができる筈も無く、慧卓はぽっかりと口を開けて固まっていた。彼の心を代表するように、熊美がごちる。

「・・・・・・あらぁ、此処ってどこかしら?」
「・・・・・・ケダモノって、こういう意味じゃない・・・」

 熊
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