第一章、その3:オカマっていうな
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き出ており、そう簡単には拭い落とせぬであろう。だが彼らの逞しい膂力によって力の限りに振るわれれば、薄い皮肉を鋭利に裁断し、獣の引き締まった胴体を抉る事は間違いが無さそうだ。
そして目を更に引くのが彼らの肩に通された、落ち葉のような茶色をした弓矢だ。屈曲した握りは一見単純な外観であるが、細部に渡るまで掌の形に符号するように磨かれている。弦の張りには動物の腱を引き伸ばした物を使ったのか、一分の緩みも存在しておらず、何時でも最大限の力を発揮出来そうである。慧卓はそれに似たものを現代で拝見している。勤木市の市営考古博物館に展示されていた、フン族の複合弓である。博物館に展示されていたのは複製品ではあったが、再現度が高いとニュースにも成っていたほどだ。その弓と彼らが担ぐ弓は、ほとんどが類似していたのだ。
(ほんと・・・凄い世界だな。まるでファンタジーだよ)
無言の行軍が更に数十分程続き、慧卓が足にそれ相当の疲労を感じ始めた時であった。ふと視界が開けていき、慧卓は其処に聳える建造物を見て納得の表情を浮かべる。
凸凹とした地面や人一人はゆうに隠せてしまいそうな程大きな岩石、それらを天然の堀と見立てた、巨大な砦が其処に築かれていたのだ。山中にて伐採された樹木もこれの建設のために大いに役に立ったのであろう。砦を砦たらしめる研磨された木壁が地形の起伏に沿って泰然と聳え、その所々に櫓が築かれており、遠目からではあるが人の姿も確認できる。これは見張りの弓兵か。また、朝の炊事の準備であろうか、靄のように灰色の煙が立ち上っており、上空にミミズ文字のような線を描いていた。
近付くにつれて、砦の巨大さが明らかに成っていく。木壁は優に四メートル以上はあり、一流の職人の手によってであろうか、見事なまでに柱一本一本が均一の高さで維持されてあり、木壁の先端は鋭利に尖らせてある。その圧倒的な光景が右に左に緩やかなカーブを抱きながら続いて行くのだ。その端は慧卓が立っている部分からは確認できない。ぐるりと一周をして砦を囲んでいるのか、はたまた砦の背部は断崖絶壁の自殺スポットとなっているのか。
この砦、かなりの規模の大きさである事は間違い無さそうだ。即ち、此処を収める者達もまたーーー。
「おーい、早く開門しろっ!!!」
『ちょっと待ってろ!!漏らすんじゃねぇぞ!!』
「誰がするかぁ!?」
中の者から放たれた罵詈に、男は罵倒を返す。くすくすと周囲を埋める者達が笑い声を零した。
やがて砦の門がギチギチと音を立てながら開かれて行く。人数人が肩を寄せ合ってやっと通れるほどの大きさの門である。それが開かれたと同時に男達が動き出し、それに合わせ慧卓達も足を進めた。
彼らを出迎えたのは大きな広場と、男達の野蛮な野次であった。木壁の内側に位置された壁の上にて見張りの者
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