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王道を走れば:幻想にて
第一章、その2:三者仲良く...
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慌てて彼女の後を追う。椅子の列が途切れると三段ほどの階段があり、その正面に厳粛な風体をした聖壇が置かれている。階段から壇の下方には赤い絨毯が敷かれていた。アリッサが身を屈め、何かを探るように絨毯に手を這わせた。そして彼女は、立った状態では見つけ難いほど小さな出っ張りを指で掴む。

「此処だ、ケイタク殿。頭を気をつけーーー」
『ガツンッ』
「あたあああっ!?」「...すまん、遅かった」

 出っ張りを引き上げた瞬間、絨毯の下から長いレバーが伸びて慧卓の頭部を直撃した。悲鳴を漏らした慧卓に詫びを入れ、アリッサはレバーを引き倒す。其の瞬間、聖壇へと繋がる階段が陥没し、聖壇がずずずと重苦しい音を立てながら巨像の方へ後退する。其処に現れたのは、薄暗闇を纏い下方へと続く新たな階段であった。大人一人、身を屈めずとも入れそうな大きさである。

「此処だ」

 一つ声を掛けてアリッサが先導して中へと降りて行く。慧卓は頭を何度か擦りながらも彼女の追従していく。聖壇の下にあったのは石造りの階段であった。明るみの源一つ無く、不安げに足元を確かめながら降りていく慧卓に対して、アリッサの方は迷い無く降りていっている。かつかつと鉄靴とバンズが石段を踏み鳴らす音が、狭苦しい階段の中に響き、慧卓の不安を煽るように反響していく。空間に蔓延る冷たい空気もまた一入である。
 段々と階段を降りて行くと、途中からその冷たい足音が反響しなくなり、変わりに柔かな感触を靴底に感じた。同時に下方へと降りていく感触が無くなり、靴の爪先にも柔らかな感触を感じた。明るみがほとんど無い為視認できないが、どうやら土であるらしい。そして階段が一本道へと切り替わっている事も確かなようだ。アリッサの駆け音が先の方角から壁の中を反響しながら聞こえてくる。慧卓はただ地下道を真っ直ぐに走っていく。
 更に数分を掛けて闇の中を進むと、ふと小さな灯火が遠方より近付いていくのが見えた。それは一本道の壁の燭台に掲げられた松明であり、その麓にアリッサが此方を見やって待機していた。彼女は慧卓が近付いてい来るのを確認すると燭台から松明を取り、再び小走りに通路を先導していく。松明に燈す明るい赤火が、暗闇が支配する道を照らしていた。二人は無言のまま地下道を疾駆する。
 暫く走っているうちに、ふと慧卓が腹部に強い違和感を覚えて鈍い声を漏らした。

「っ、いっつぅ...」
「どうした?あっ、やっぱり頭は結構痛かったか?すまない...」
「そうじゃなくてですね、こっち来る前に怪我をしてて...」
「!見せてみろ」

 通り掛かった三寸路にて二人は一度止まる。丁度三方から道が合流しているだけに、この部分だけ幅広に道が広がっていた。三寸路の一方は奥地、山中へと通じる道だろう。もう片方は墓地より通じる逃げ道か。
 壁に
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