暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
第一章、その2:三者仲良く...
[6/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
なんで人のファッションまで駄目だしされなきゃいけないんだ、アリッサこの野朗!!」

 互いを心のままに罵倒しながら両者は木々の間をより速く駆け抜けていく。その二人を追い掛けるように、野蛮な者達が己の弓矢で以ってこれを仕留めんとひうと矢を次々と放っていく。幾本は樹木の厚さに阻まれて突き刺さり、葉を何枚も貫きながら当てずっぽうに森林の中へと消えていく。而して幾本は着実にアリッサ達の後を捉え、彼女達の足跡を射抜くように夜闇を駆け抜けていった。

「さっきより狙いが正確になったじゃないか!!なんて事をしてくれたんだ、お前はぁ!!」
「そんなに俺の服のセンスを罵倒したいのか!?夏なんだから清潔感出したっていいじゃないか!?」

 更に互いを罵倒し合おうとした瞬間、鬱蒼とした森林に立ち込める陰鬱感を払うように、闇の中を突き抜ける一際大きな雄叫びが鳴り響き、直後、悲惨な悲鳴が木霊していく。

『アオオオオオオオオオオオっっっっ!!!!!!』
『ぎゃあああああああああっ!!!!』
『ひいいっ、熊がぁあっ、熊があいつの尻をおおおお!?』
『は、速すぎるっ、くっ、くるなあああああああ!!!!!!』

 悲鳴の連続を皮切りに、木々の間を駆け抜ける弓矢はついぞ消えて失せた。アリッサ達の走駆を引き止めようとする者達の声一つ響かない。熊美が野蛮な者達をもう制圧したのであろうか。

「流石はクマ殿...!荒ぶる羆の伝承は本物だったのか!!」
「......尻って、なに?」

 背筋を悪寒で震わせ、慧卓はアリッサの方へと向き直った。
 二人の足は既に森林の絨毯を越えて、教会の外縁部に辿り着いていた。獣避けの柵を越えて、敷地内へと足を踏み入れる。入って直ぐに敷き詰められた小さな庭園、小さなポピーの花が色鮮やかに咲いていた、を急ぎ駆け抜ける。古びれた木の扉を開けると、其処は教会の聖堂であった。広々とした聖堂内には多くの椅子が何列も陳列していたが、何年も使用されていないのかすっかりと埃を被っており、床にも薄ら灰色の埃の塊が転がっている。本来の入り口である大扉は風化に堪え切れず、扉の表面には皹が幾本も入っていた。聖壇の方向に顔を向ければ、其処にあるべき筈の清廉な参列者を祝福するように大きく手を広げられた聖像が悠々と聳え立っていた。像の高さは人二人分といったところか。如何にも為政者らしい厳粛な顔付きの男であるが、其の顔には似合わずゆったりとした司祭服を纏っている。為政者にして聖者。政治と宗教。現代の価値観から見ればその男は矛盾の存在と同列に見えていたが、男の神聖さを強調するように煌びやかなステンドグラスが像の背部に飾られていた。きらきらと夜光に光るそれは、黄色の樫の花であった。
 その美麗な風景に目も遣らず、アリッサは急いで聖壇の下へと駆け寄っており、慧卓も
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ