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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十四話 独立混成第十四聯隊の初陣(下)
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ト合流ニ成功セリ”!」

「導術!!大隊を集結させよ、聯隊主力前進、攻撃を開始する!」

 聯隊本部は導術兵の利用を行っているが故に動かずとも膨大な情報を処理せねばならなかった。
「首席幕僚殿、第ニ大隊、敵と交戦を開始しました。
聯隊鉄虎大隊、及び第一大隊第四中隊によると敵騎兵隊主力はほぼ完全に潰走。
これで彼我の戦力差はほぼ逆転しております。
統制も崩れており、大規模な反抗はいかに〈帝国〉軍といえども困難でしょう」
大辺は黙って頷き、先を促す。

「第二大隊は聯隊長殿が直率する集成大隊と合流、再編後は敵の掃討に向かいます。
聯隊長殿は聯隊本部に戻るとのことです」
 情報幕僚の報告が終わると本部天幕に安堵の声が響いた。

「――慣れぬ事でも案外上手くやれるものだ。麾下にある指揮官達の質に恵まれたからかな」
と大辺は自然と流れている冷や汗を拭いながら云った。
 実戦の経験は殆どなく、指揮官としての最後の経験は中隊長、少佐になってからは後方勤務が殆どである。

「いえ、御見事でした。首席幕僚殿。」
 鉄虎大隊へ聯隊本部の方針を伝達し終えた秋山大尉が笑って云った。彼はもっぱら前線勤務が多く、匪賊討伐を幾度も経験している。
「兎に角、これで我々が恐るべきは、<帝国>の増援のみでしょうね。攻撃衝力を失った騎兵は数で叩けば恐ろしいものではありません。逆に言えば勢いがついたら手がつけられませんが今回は最後まで我々が主導権を握る事が出来たので問題ありません」
戦務幕僚の石井が水を呷りながら云った。
「――しかし、驚きましたよ。剣虎兵というものはここまで上手く嵌ると一方的なんですねぇ。〈帝国〉騎兵隊が見事に無力化されるとは」
「あぁ、よほど剣牙虎に馴らさない限りは騎兵の天敵ということだな。
そこを突いたのだろうが聯隊長の構想は楽観的に過ぎた」

 無視できぬが勝ちは不可能ではない兵力を展開して敵を引きつけ、迷彩を利用して近距離まで鉄虎大隊を接近させ剣牙虎の咆哮で騎兵の大半を無力化し、砲兵隊の強襲で火力を、剣虎兵で無力化した騎兵を、それぞれ叩く。そして優位を得たうえで砲兵隊の援護の下で銃兵を投入し鉄虎大隊と協同し、包囲殲滅へ移行する。
 馬堂聯隊長が示した方針の下で彼らが作り出した作戦がこれであった。
だが、実際には包囲殲滅などできる状況ではなく、それぞれ同時に攻勢をかける羽目になってしまった。予定道理であれば正面からの集成大隊による火砲支援を受けながら鉄虎大隊と銃兵隊による攻勢によって一方的にたたく予定だったのだが、それも上手くはいかなかった。予想以上の綱渡りとなってしまったのだ。
「どうにか手持ちの戦力で対応しきれる範囲の誤差だったが、戦訓として検討せねばならないだろう。聯隊長が経験した戦いにおける夜襲・兵站破壊が
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