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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十四話 独立混成第十四聯隊の初陣(下)
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 北東方面 森林内
独立混成第十四聯隊 聯隊鉄虎大隊


聯隊主力から離れ、鉄虎大隊は近くの森林地帯に潜伏を行っている。
大隊情報幕僚は緊張を飲み込み、やや上擦った声で大隊長へ報告する。
「大隊長殿、聯隊本部より伝達、行動開始せよ、諸君らの武運長久を祈る」
 棚沢少佐もそれに頷き導術兵達を呼びつけ、指示をだす。
「各中隊に伝達、配置につけ。敵は騎兵だ、馬に気づかれないように、風下を慎重に動け」
 土と草の色で彩られた迷彩服を着用した剣虎兵達が密かに動き始めた。その姿は一般兵達の自身の姿を誇示するためかのような(事実、玉薬の煙などによる視界不良から同士討ちを避ける為に誇示しているのだが)軍装と異なり、半里も離れれば彼らの姿を視認するのは難しいだろう。
しかし、剣牙虎も馬も人間とは比べ物にならない五感を有している。迷彩のみでは聴覚も嗅覚も欺くことはできない、故に彼らは剣牙虎の狩りと同じ手法をとらなければならないのだ。

「遅れさせるなよ。騎兵突撃が行われる前に仕掛けなければならんからな。」
 聯隊鉄虎大隊の編成は本部下に三個鉄虎中隊と一個捜索剣虎兵中隊。輜重・工兵・導術・癒兵小隊と鋭兵中隊で編成されている。輜重部隊が縮小され、剣虎兵部隊が増設されているのは独立部隊ではない故の強みだ。保有する剣牙虎の数のみならば第五〇一大隊にも劣らない――無論、大隊単独での単隊戦闘力では大いに劣っているが。
 現在、支援部隊は聯隊本部直轄として聯隊主力の下に置かれているのだが何も問題はない。奇襲を素早く行う事にはそれ以上の価値があるからだ。

「第一・第二中隊は所定の位置につきました。敵の動きは変わりなし、気づかれていませんな」
棚沢は頷いた。
 大隊本部は第三・第四中隊と鋭兵中隊を直卒している。大隊鋭兵中隊は軽臼砲を装備しており、剣虎兵達が突撃する為の支援に使用されることになる。
「よし、後は引きつけて一気に叩くぞ!いいか、猫に無駄吠えをさせるなよ!」
 棚沢少佐は静かに怒鳴ると云うある意味器用な事をしながら機会を待ち受ける。
 本部から少々離れた第四中隊の面々もまた小器用に配置につきながら小声で会話をしていた。
「北領を思い出しますな」
 着剣した騎銃を構えた上原軍曹が不敵な笑みを中隊幕僚となった西田中尉に向ける。
この第四中隊の下士官達は皆、西田と北領以来の付き合いであった。
「あぁ、だがあの時よりも頭数が多い。何より今のところは此方が有利だ。
まぁ、今は俺達が勘付かれていないだけでも十分だ」
 騎兵二個大隊が彼ら聯隊鉄虎大隊の獲物である。ベンニクセン率いる主力が突破を行うのに呼応して回りこみ、方陣を組んでいる部隊の誘引を行うのが彼らの役目であった
「出来れば最後まで勝ち続けていたいところですな」
 そう言って肩をす
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