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彷徨った果てに
第六章
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第六章

「ああしてな」
「成程、そうだったのね」
「懐かしいな」
 暖かい顔での言葉だった。
「本当にな。ただな」
「ただ?」
「違うな、あれは」
 無意識のうちに子供達を見てだ。そうしての言葉だった。
「あの子達の動きな。ああいうのじゃなくてな」
「どういう感じがいいの?」
「そうだな。これはな」
 どうかと話そうとするとだ。ミレットが言って来たのだった。
「私に言うより子供達に言った方がいいわよ」
「あの子達にか」
「そう、その方がいいわよ」
 妻も無意識のうちにだ。夫にこう言っていた。
「そうした方がいいわよ」
「そうだな。言われてみればな」
「そうよね。それじゃあね」
「わかった」
 ロペスはミレットの言葉に確かな顔で頷いた。そうしてだった。
 彼等のところに来てだ。こう声をかけたのである。
「ちょっといいか?」
「あれっ、おじさん何?」
「僕達に何か用なの?」
「おじさんも一緒にサッカーしていいか?」
 アルゼンチンの訛りが入ったイタリア語でだ。子供達に言ったのである。
「今から君達とな。そうしていいか?」
「あっ、おじさんもサッカーしたいんだ」
「そうなんだ」
「ああ、サッカーが好きだからな」
 それ故にだとだ。自然と子供達の中に入ってだ。
 そのうえでだ。子供達に言ったのである。
「それでだけれどな。いいかい?」
「そうだね。丁度人が足りないしね」
「サッカーがしたいのなら一緒にしよう」
「僕達とね」
 子供達は彼の申し出を笑顔で受け入れた。そうしてだった。
 彼は子供の中に入った。そのうえでだ。
 子供達に親切にだ。サッカーのことを教えていった。するとだ。
 子供達の動きが変わった。見違えるまでにだ。それを見てだ。
 ミレッタはあることを思った。そしてだ。
 子供達と共に遊びながら教え終えて戻ってきたロペスにだ。こう言ったのだった。
「あなた、やっぱりサッカー好きなのね」
「無意識のうちに何かな」
 遊んで教えていたというのだ。
「そうしていたな」
「そうね。それじゃあね」
「ああ、何だそれで」
「やっぱりサッカーをするべきよ」
 こう夫に言ったのである。
「絶対にね」
「離れるつもりなんだがな」
「それは選手としてよね」
 ここでだ。妻の言葉は核心を指摘した。
「そういうことよね」
「選手としてか」
「そう、実際にプレイする人としてはね」
「もう充分に動けなくなった」
 彼が言うのはこのことだった。ここでもだ。
「だからって思ってな」
「それでも今は子供達に教えていたけれど」
「いい感じだった」
「じゃあ。これからはね」
「子供達に教えればいいっていうんだな」
「サッカーのチームは選手だけじゃないわよね」
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