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とらっぷ&だんじょん!
第一部 vs.まもの!
第14話 きょうふのいちや!
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う、木材や、割れた酒の瓶が散乱している。それらの物やアルコールに引火して、火が広まっているのだ。
 縋りつくように、ノエルの手を引いて逃げた。
 彼女だけは守りたかった。彼女の為にではない。自分の為に。ノエルを死なせたら、宿舎から逃げた自分が許せなくなる。
 路地を挟んだ前方の屋根に、三人の仲間が見えた。
「パスカ!」
 来い、とパスカが手で合図する。ウェルドは屋根から飛び降りた。
「ノエル、来い!」
 屋根の上でまごつくノエルを見上げ、ウェルドは両腕を広げた。
「飛び降りろ! 早く! 大丈夫だから!!」
 ノエルは意を決して、ふわりとスカートを広げて飛び降りてきた。それを横抱きにする形で受け止めて、抱いたまま、ウェルドは走った。パスカたちがいる建物の外階段を駆け上がり、屋根の上でノエルを下ろす。
 屋根の下を誰かが走って行った。パスカが片膝をついた姿勢で弓を構えた。
「待って! あれ、バルデスのおっさんだよ!」
 ジェシカの言葉に、パスカは弓を引く力を緩める。バルデスが来た方向へ、五人は走った。エレアノールは追って来なかった。レイアも。オルフェウスも。イヴが、アーサーとサラが、シャルンとアッシュが、どこへ逃げたかわからなかった。気にする余裕もなかった。
 敵は人が密集する方を目指すと思われた。火からも戦いの喧騒からも遠い路地で、五人は座りこみ、息を切らす。
 女の声が聞こえた。
 泣いている。ウェルドは呼吸が整わぬまま立ち上がった。膝が笑う。
 建物の陰から伺うと、そこに人が倒れていた。流れている血の量から、既に絶命しているとわかる。
 泣いているのは、先ほどネリヤと呼ばれていた女だった。
「イロット」
 ネリヤは死者の手を握った。
「イロット、イロット――わかる? 私だよ……姉ちゃんだよ……」
 ウェルドは居たたまれなくなって、仲間たちのもとに戻った。



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