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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十三話 独立混成第十四聯隊の初陣(上)
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長殿、ここでせめて一撃を与えなくてはなりません」
 首席参謀の言葉にベンニクセンも頷いた
――ここで無視をして逆に包囲される危険を放置する事もまた論外である。猟兵達は健脚ではあるが、単科編成時の捜索騎兵がもつ程の身軽さはさすがに失われている。
蛮軍も馬鹿ではない。ここで向こうが防衛体制を整えているという事は主力にも既にこの部隊の存在が露見していると考えるべきである。
もしこの部隊を迂回したとしても蛮軍の予備隊にでも遅滞戦闘を行われるたらこの部隊と予備隊の挟撃を受ける事になる。そうなったら全滅しかねない、ならば各個撃破で行くしかない。
――被害を覚悟したうえで砲撃を集中して方陣を崩し、騎兵、猟兵で追い散らすべきだ。一撃での隊列を崩さなければならないが私の騎兵聯隊ならば十二分に可能である。そしてそれは騎兵の本懐である。確かに自分達は偵察部隊ではあるが、だからこそ、その度胸は誰にも劣る物ではない。
 ベンニクセンを含め、誰もがそう信じていたし、その自信は実績に裏打ちされた矜持であり、断じて過信ではなかった。随行している〈帝国〉猟兵達も精兵であり、北領の戦を経た〈皇国〉軍も明らかに自軍の銃兵より質で勝っていると認めたほどである。そして――何より数で勝っている。
 ――要は、厄介なのはあの方陣群だけだ。増援が来る前にあれを崩し、騎兵と猟兵で蛮族共を追い散らせば片付く話だ。

 練達の騎兵将校らしく迅速に決断を下したベンニクセン聯隊長は参謀陣へ突撃発起線の策定と騎兵砲の集中配置を命じ、彼の配下らしく部下たちもまた迅速にそれを実施する。
 だが、突撃発起線へ部隊の移動が行なわれている様子は剣虎兵と同じ迷彩服を纏った第十四聯隊の砲兵観測班により察知され即座に導術網を利用し、各部隊に伝達され、未だ事前の計画通りに行動するという贅沢を味わいながら両軍の将兵達は動きまわり、静かな緊張と無言の合意の下でこの地を死地とする準備を整え――開幕を告げる砲声が響く。

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