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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十三話 独立混成第十四聯隊の初陣(上)
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謀たちも思っていなかった。故に彼らは騎兵らしく敵が守勢に入る前に打ち崩すべく、行軍を再開した。


同日 午前第十刻 集成第三軍反攻前線北部 近衛総軍作戦境界付近 丘陵
独立混成第十四聯隊 聯隊本部


「――来たか。」
 にやり、と聯隊長の馬堂中佐が不敵な笑みを浮かべている。遠くから断続して続く砲声、銃声にも感情の細波を引き起こす様子はない。

「はい、聯隊長殿。敵部隊にどうやら胸甲騎兵は含まれていないようです。――断言は未だ出来ませんが。数はおおよそ3.500名から4.000名と事前の情報よりやや大規模な上に騎兵砲と猟兵を随伴した諸兵科連合編成と中々嬉しい情報が入っています」

「大まかな編成は分かるか?」
口元に笑みを刻み、聯隊長は尋ねる。
「三千名の騎兵部隊を中核に大隊規模の猟兵と騎兵砲部隊を随行させているようです。
幸いと云うべきなのは此方と違い、平射砲・擲射砲を保有している形跡は確認されておりません」
 首席幕僚である大辺少佐は聯隊長とは対照的な無表情と声で淡々と答える。

「おそらくは一撃して即座に離脱する腹積もりなのだろうな、だが逆に此方が出鼻に一撃すれば貴重な騎兵隊を叩き潰すことができるのは大きい――導術様々だな」と聯隊長も頷き、指示を飛ばす。
「――所定の計画通り、第一・第二大隊の各中隊は方陣を組め、平射砲隊は中隊事に射線を確保しつつ方陣の後方に砲列を。擲射砲隊は丘陵頂上に出すなよ、まだ敵に見せる必要はないからな――いよいよ第十四聯隊の初陣だ。ヘマをするなよ!」
 聯隊長の指示を受けた駒州の精兵達は直ちに命令を遂行した。中隊ごとに組んだ方陣は、中央にある中隊本部と軽臼砲小隊を置き、単隊でも堅牢であるがこれを利用し相互に支援を行える様に大隊本部が指揮を行う事により、彼らは教範通りの――導術の即時性を計算に入れるのならばそれ以上の堅牢な隊形の一要素となった。
銃兵二個大隊は砲兵や聯隊本部が置かれている丘陵を囲むように方陣を連ね――かくして独立混成第十四聯隊の本隊は守勢を整えて敵を待ち構える事に成功した。そう、少なくとも〈帝国〉の逆襲隊が呻き声を揚げる程には。


同日 同刻 独立混成第十四聯隊主力より北方九里 第21師団 捜索騎兵聯隊 聯隊本部
聯隊長 ベンニクセン大佐

 望遠鏡をおろし、ベンニクセン大佐は呻いた。
「――厄介な」
 だが、彼はそれでも致命的な問題だとは考えていなかった。
――確かに、方陣を崩そうにも敵が保有する砲の門数は此方とほぼ拮抗しており砲の質を考えるのならば――騎兵砲は平射砲を小型化したものである為――明らかに敵部隊の火力が優越している。 本来ならば我々が成すべきことは敵の側背を突くことであり、此処で守りを固めた敵を相手に戦力を消耗する事ではない。
「聯隊
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