【第1話】35号室の直弥さん
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「なおちゃ〜ん!」
「?お、アリスかどうした?」
なおちゃんはちょっと不良さんっぽい感じの人だけどすっごく優しくて大好きです。不良さんじゃありません!お顔がちょっと怖いだけなんです!
なおちゃんはベッドで何か読んでいました。
亞李鎖はトコトコ直弥に近づきました。
流李は病室の扉を閉めてから2人のもとへ行きました。
「なおちゃん、何読んでたの?」
「アリスとは無縁の本だよ」
「無縁か〜で?どんな本?」
「・・・絵画の本だよ」
直弥は少し俯きながら呟くように答えた。
「絵の本?見たい!」
直弥は先ほどまで見ていた本を亞李鎖にそっと渡す。
「ほら」
「わぁ〜!ありがとう!」
直弥は少し寂しそうに絵画の本を読んでいる亞李鎖を見ていた。
「それにしても流李さんもアリスのお守りは大変だろ」
「ん〜まあ、そうですけど・・・子供は好きなので」
流李は控えに微笑む。
「あ〜流李さん子供好きそうな顔してるもんな〜」
「え?どんな顔ですか?」
「ん〜流李さんみたいな?」
「えぇ〜全然わかりません」
二人は笑いあう。
こんな他愛も無い会話が二人には心地よかった。
一方、亞李鎖は絵画の専門用語に苦戦していた。
「ん〜もう飽きちゃった・・・」
「早いな飽きるの」
「だって意味わからない言葉がたくさんあるんだも〜ん」
「まあ、10才のアリスちゃんにはすこし難しいですね」
「うん!10才の亞李鎖には難し〜い!だから、なおちゃん!もっとわかりやすい絵本かってきてね?」
「アリスのために俺が買うのか?」
「そうです!」
亜李鎖はエッヘンと胸を張る。
直弥はやれやれという様子で
「じゃあまた来い?絵本用意してやるから」
亞李鎖はニッコリと
「うん!絶対くるね!」
「おぅ」
「約束したよ〜!」
「あぁ、約束な」
こうして私となおちゃんは、今度きたら絵本を見せてくれる約束をしました。
「じゃあ、なおちゃん、また今度ね〜!」
「でわ、直弥さんお大事に、失礼しました」
「あ、はい。またなアリス」
「うん!バイバイ!絵本忘れないでね!」
「おぅ」
静かに扉が閉まっていくのを、直弥は寂しそうに眺めていた。
そんなこと、メルヘン少女は知らない。
このとき、直弥の身体も病気に侵され、もう長くないということも・・・彼女は知らない・・・。
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