冬の戦争
ハンシン・ユッカ
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ハンシン・ユッカ号は元々爆撃機ではなく、全金属製単葉引込脚の双発旅客機を改造した物です。
合州国のダグラス社が製造したDC-2は、有能な双発旅客機として知られていました。
フィンランドの人々を救う事は全てに優先する。
伯爵は自らの信念に基き、決断を下します。
爆撃を中止し、1人でも多くの負傷者を安全な母国へ空輸する。
ハンシン・ユッカ号は、負傷者をスウェーデンに送る為に使用する。
往復の際には医薬品や栄養食品、暖房器具及び燃料を極力多くフィンランドへ届ける。
行動力に富む伯爵は即刻、動き始めます。
全ての病院に連絡が廻され、負傷者の数と不足する医薬品等のリストが作成されました。
操縦経験を有する多くの人々、両国の政府も協力し空輸作業に精通する搭乗員達が集められました。
フィンランド航空は、ユンカースJu52/3M中型輸送機を2機しか保有していません。
輸送力の不足に苦慮する彼等に取り、ダグラスDC-2の輸送参加は干天の慈雨とも思える有難い申し出でした。
伯爵は自ら操縦桿を握り、出来る限り多くの負傷者を乗せて離陸します。
めざすは飛び慣れた母国の空であり、無事に着陸する運びとなりました。
空港には連絡を受けた医療関係者達が、今や遅しと到着を待ち受けています。
機体から現れた負傷者達は救急車に乗せられ、直ちに病院へと運び込まれます。
設備の整った国立病院で緊急手術が行われ、負傷者は危機を脱しました。
多数の負傷者が手厚い看護を受け、生命を取り留める事となりました。
伯爵は機体の点検が済むと、再び操縦桿を握ります。
既に隣国から一覧表が送られ、梱包された医薬品や栄養食品と暖房器具及一式び燃料が満載されています。
ハンシン・ユッカ号は離陸し東へ旋回、戦渦に覆われるフィンランドへ向かいます。
何度も往復が繰り返され、参加を申し出た操縦経験者達と共に伯爵は操縦桿を握りました。
数多の負傷者と無数の援助物資が、フィンランドとスウェーデンを行き交いました。
有能な輸送機DC-2は実力を遺憾無く発揮し、補給に貢献し黙々と後方支援を担当します。
森と湖の国を支える為に尽力するハンシン・ユッカ号は、軍用輸送機としても本領を発揮しています。
或る時スウェーデンからフィンランドへ向かう途中、バルト海の上空でソ連空軍の双発爆撃機SB-2と遭遇。
フィンランド空軍は救援要請《S・O・S》を受け、戦闘機を緊急発進《スクランブル》させますが。
孤立無援のハンシン・ユッカは銃撃を浴び、絶体絶命の危機に曝されました。
非武装のユンカースJu52/3M中型輸送機であれば、抵抗する術も無く撃墜され
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