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王道を走れば:幻想にて
第一章、その1:どうしてこうなった
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 例えばの話。もしも、もし地球の文明とは違う、全く独自の文化を形成している異世界があるとしたら、そこはどのようなものになっているのだろうか。山々が大小問わず噴火しているのだろうか。海が全ての山を飲み込んで、地平の彼方から足元まで底なしの水が満ち溢れているのだろうか。或は数少なき大地を神と悪魔が争うという、新興宗教活動家が狂喜せんばかりの光景が広がっているのだろうか。
 答えは簡単である。『全く予想がつかない』。そこに何があるのかは誰も知らないし、その存在も証明しようが無い。だからそこに何があるのか、何が無いのかを想像するのは個人によって様々である。
 例えば、どこかの世界が一つの繋がりを頼りに、地球の文明と瞬間的な交流を果たしたとしても、それはその人にとっては極自然な発想なのである。


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 漠然として遠い未来。
 子供の頃に夢見た其の世界では、人々は妙に身体にフィットした衣装を身に纏い、空では最先端の技術を突き詰めた飛行体が飛び交っていた。食べ物は皆新鮮で且つ種類も豊富。歩道は自動で動くようになり、地を走る車は僅かに浮遊している。ちょっとやそっとの自然現象では、並び立つ高層の建物はびくともせず、さながらバビルの塔の如く立派に聳え立っている。買い物の時には携帯型の端末から自動でお金が引き落とされるようになり、現金の姿など稀になっていた。嘗て地上と空を支配していた原油の姿は無くなり、自然の生態系を破壊しない、全く新しいエネルギー資源に取って代わられている。
 無論其の世界でも思想、イデオロギーの対立から人々は衝突するが、だがそれ以上に夢と理想の甘い蜜で満たされた世界であった。夢を見るたびに心が安らかとなり、理想を抱く度に高揚心が沸く。
 だがそんな事、ただの空虚な想像であったと知ったのは案外早いものであり、それは中学生になる前であった。己が地球に生まれた時から世界は何時だって、目には分からぬ変化しかしていない。青年はそう思って教室で惰眠を貪るのだ。

「......今挙げたような経緯を経たお陰で、1648年、ウェストファリア条約が締結された。世界初の国際会議における、世界初の多国間条約であり、また一分界隈では神聖ローマ帝国の死亡証明書とも言われており...」

 からからと青褪めた天上から蝉を蒸し焦がすような熱線が放たれている。夏影一つ、月曜の億劫な空気を醸し出す機械の大地に降り立つ事もない。
 世間に煙のように蔓延るクールビズの風潮は勢いを増す。陽射は真上へと差し掛かり、街を闊歩するリーマンの方々はその暑苦しさと汗の蒸れに悲鳴を漏らしている頃合であろう。
 だが生憎、教室内ではクーラーの心地良い冷気が巻かれているために苦しさを覚える事はない。自動温度調整が利いている為、熱くも無く涼し過ぎる訳でも
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