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王道を走れば:幻想にて
第一章、その1:どうしてこうなった
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苛立ちを募らせてぶんぶんと髪飾りを振って叫ぶ。

「顕現せよっ!!召喚しなさい!!出ろって言ってるでしょっっ!!」

 彼女の思いも虚しく、手の中で揺さぶられる髪飾りは、まるで彼女を嘲笑うかのように月光に己を煌びやかせていた。

(散々に羞恥心を覚えた挙句この結果だと!?こんのぉぉ、素直に言う事を聞かぬ熊めぇ!!!!!)
「さっさと出んか、このケダモノがぁぁ!!」

 思わずアリッサは腕を振り被り、髪飾りを思いっきり地面に投げつけた。
 ぐさりと髪飾りが地面に突き刺さった瞬間、眩いばかりの白光が放たれ、その中心より小さな蒼い粒が浮かび上がる。そして大気を吸収しながら目にも留まらぬ勢いで粒が膨張して、人二人分が入り込めそうなほどの大きな球体と変じる。周囲の大気を巻き込む勢いは嵐の強風のそれと同じであり、思わずアリッサは腕で顔を覆って己を守る。足が球体に引き込まれそうになり、ずるずると地面を滑っていく。だがアリッサは瞳を閉じ、歯を食いしばってそれに懸命に耐える。
 やがて、始めは純真であった蒼の粒の中に黒い斑点が浮かび上がり、そして煌びやかさを侵食するようにどんどんと球体が黒ずんでいく。その黒ずみが球体全体を侵食した瞬間、球体が弾け飛んで、収縮された大気が放たれた。アリッサは身体を襲う空気の烈波を耐え抜き、閉じていた瞳を開けて、其処にある光景に瞠目した。

「......あらぁ、此処ってどこかしら?」
「......ケダモノって、こういう意味じゃない...」

 未開土人の如きごつい風貌を薄化粧と淡い口紅、そして華麗な服装に身と包んだオカマが立っている。其の大きな背にぐったりと、何処か疲弊して苦痛を抑え込む様に眉を顰めている男子、御条慧卓の姿があった。
 意味の分からぬ光景に途轍もない徒労感と落胆を感じ、情けなくアリッサは弱音を吐いたのであった。
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