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王道を走れば:幻想にて
第一章、その1:どうしてこうなった
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、彼らの目には唯私利私欲のみが渦巻いております。だからこそ彼らは躊躇無く神聖なる教会を荒らす。ですが御安心あれ。このアリッサ=クウィスの剣閃の前には、彼ら野蛮な賊徒如きなど一捻りです」
「えぇ、頼りにしております」

 無垢なる神父に魂の救済を。そう胸中に言葉を漏らすと、両者は神父の横を抜けて裏口を抜けていく。
 緊迫した教会を抜けた二人を冷たい夜風が覆っていく。その冷ややかさに、服装の下に濡らした汗がより冷たく感じられた。
 走る最中、勢いに押されて頭部を覆うローブが払われ、コーデリアの容貌が顔立ちとなる。一級の研磨師により磨かれた宝玉の如く、美麗な琥珀色をした丸い瞳。淡白の蒼い髪の毛は気品を見せ付けるようにすらりと伸びており、その瑞々しく滑らかな肌は陶磁器のよう。意志の強さを感じられるきりっとした柳眉。紅牙大陸に顕現するこの王国を隈なく探したところで、この域に達するまでの美麗な女性に逢う事はそうそう有得る話ではなかった。
 二人は無言のまま木々の間を擦り抜けていき、やがて教会から幾許かの距離を開け、森林の中に敷かれた山道より僅かに逸れた場所に留めてあった己の馬の下に辿り着いた。背後では、教会での捜索を終えたであろう野党達の荒々しい声が、少しずつ、着実に近付きつつあった。

「矢張り馬を此処に留めていたのは正解でした、賊徒共が気付いた様子は無い。閣下はこれに乗馬なさり、一刻も早く近隣の村へ、王国兵の下へとお逃げ下さい」
「しかしアリッサ!貴女は一体如何なさる積りですか?...まさか」

 コーデリアははっとしてアリッサに向き直る。彼女はその凛々しき口元に、するりと笑みを浮かべた。

 「私も騎士の端くれ、刃を交えずして賊徒に背を向けて逃げるは、騎士として最大の恥なのです。どうかご理解を」
「駄目ですアリッサ!此処で死のうとしてはなりません!騎士の名誉は、生きてこそ成就するものです!私にそう教えたのはアリッサではありませんか!?」

 コーデリアは懇願するように声を荒げてアリッサに訴える。アリッサは彼女を安心させるように笑みを和まる。

「ふふふ...何も死に逝くような事ではありませぬ。一戦交えたら、教会の地下道を走り抜けて逃げますよ。ですから御安心を。賊徒を軽くあしらって、必ず戻ります」
「...ならせめて」

 コーデリアは俯きがちにアリッサの厚い鎧の上に、ゆっくりと己の身体を預ける。言葉にできぬ不安を浮かべた彼女をあやす様に、アリッサが鉄のグローブ越しではあるが、優しく彼女の髪を撫でていく。

「御武運を、アリッサ。待っていますから」
「えぇ、コーデリア様。...ふふ、まだこの髪飾りをしてらっしゃるとは」

 アリッサは腕の中で身動ぎ一つせず抱擁を甘受するコーデリアを愛おしく想い、その柔らかな髪を留め
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