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王道を走れば:幻想にて
プロローグ:雪化粧の修道院 ※エロ注意
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すんすんと鳴らす。漂うそれには食欲を湧かす香辛料の臭いがふんだんに混ざっていた。

「......ンー、我らは女神は今日はカレーを作っているのかな?林檎が入っていると嬉しいんだけどよ」

 そう独り言を零していると、通路を靴で鳴らす音が響いてきた。頸を其方へ向けると、諦観の色を滲ませた表情で慧卓が戻ってくる。  

「お帰りさん。その様子じゃまだ居るようだな?」
「まぁな。でもあいつらも分かっているのさ、俺は梃子でも学院に入らないってな。俺の勧誘ってのは建前で、本音は寒い中を我慢して歩いて美味しい昼飯を喰らいに来たって所だろ」
「ハハ、王立高等魔術学院の一級魔道士も、腹を満たす絶品の料理には勝てないってよ」
「違いないな。其の上、それを作るのが彼女なら尚更さ」
「清廉な修道女にして王国でも指折りの可憐な少女だからな。いやぁ、流石は我が妹だよ!これで変な虫が付かなきゃ文句ないんだけどよ!」
「なら、虫が付く前に俺がもらおうか?」
「寝言は寝て言えよ」

 一つ軽口を叩き合うと、ジェスロは腕組みをして慧卓を見遣る。語尾に『よ』を何かとつける口調を伴って話しかけた。

「それはそうとだ、もう一年半だぜ」
「ん?」
「お前がこっちに来るようになってからよ」
「へぇ...もうそんなにか。時が経つのは早いもんだな」
「言い振りがおっさん臭い」
「放っとけ」

 僅かに不貞腐れるような口振りにジェスロが笑みを零し、何処か遠くを見詰めるような瞳をして虚空を見詰めた。

「でも、本当に速いな。何か特別な事をしたってわけでも無いのにな」
「だからこそだろ?ありふれた日常こそ、俺達が自覚していないだけで一番の至福の日々。誰もそれを自覚しないまま過ごしているって事だ」
「フーン、そういうもんかよ?至福の日々ってのは、もっとこう、壮大で、刺激的な日々の事だと思うんだがよ」

 ジェスロがそう熱を帯びた言葉を口にした瞬間、二人が立ち去った部屋で大きな爆発音が鳴り渡り、部屋の扉が噴出する光の勢いに吹き飛ばされて通路に倒れ込んだ。

『ちょっとジャレド、またなの!?!?』
『ハハハハハ!この軟弱な魔方陣め、また爆発しおって!ハハハハハ!』
『ハハハじゃないでしょ!?そんなんだから何時までたってもこの教室がボロいまんまなのよぉぉ!ちょっとは自制して!!』
『あっちっっ、あっちっ、マントに火が!!!』

 阿鼻叫喚が室内で生じる。甲高い悲鳴が木霊する中、ジャレド少年の高らかで投げ遣りな哄笑が響き渡った。

「...壮大で刺激的な日々って、こういうの?」
「ぜんぜん違います」

 冷静に即答するジェスロの顔に冷や汗が流れ、同時に慧卓の頬にも冷たいものが流れた。
 今の騒ぎ、間違いなく先生方にも聞かれた。そして同じ
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