プロローグ:雪化粧の修道院 ※エロ注意
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一面の雪景色。さらさらと灰色の雲間から純白の粉雪が降り頻る。朝焼けと共に降り始めた雪は日が昇り始めると同時に一段とその勢いを増し、今では街道に指先ほどの厚みを積んでいた。道横に聳える樫の木に雪が降り注ぎ、層となって重なった重みで枝が沈み込んで雪を払い落とす。水飛沫の様に小雪が空を舞った。
風が疎らに地を撫でて地に注いだ降雪を滑らせる。天地の寒さはいよいよ冷え込むといったところか。街を外れた街道の付近には野生の鹿がふわふわと生えた体毛に雪を背負い、暢気に雪空の下を歩いている。口から漏れ出す白い息は当に冬の景色。ぼーっとそれを視続けているならば、きっと此方も風邪のように寒さを移されてしまうであろう。自然にそう思えるほどのありふれた冬が天地を覆っていた。
其の中、純白に染まり込んだ道を歩く者達が居た。「ジャリ、ジャリ」と、雪を踏みしめる音が静かに鳴る。防寒用に厚手の黒のロープに身を包み込んだ者達は一様に若く、寒さで口をかすかに震わせていた。手にひしと握られたのは黒染めの質素な見た目の杖である。くるりと輪を描くように杖の先端が湾曲し、まるでフックのような形をしている。その輪の中、十字に交わされた型の中できらきらと輝く宝玉が収まり、複雑な形をした文字の羅列を放っていた。等しく大地に生きる者、王国に生きる者であれば、それが高等魔術師の呪印である事が直ぐに分かったであろう。
そんな彼らの視界に、一つの建物が見えてきた。白面の小さな湖を挟むように位置するその建物は雪景色の中でひっそりと、世俗のしがらみから身を置くように佇んでいる。街並みから外れた一つの建造物、修道院だ。石造りのそれに覆い被さるように降雪が舞い降り、今し方雪庇(せっぴ)の欠片が大地に引かれて地に落ちた。純白の雪空を王冠のように被ったそれは荘厳で、言葉に言い表せぬほど美麗であった。
その建物の中、大き目の部屋の中で十人を少し越えた数の少年少女らが真剣な眼差しをして己が両手に集中していた。皆一様に幼さを引き立たせる白のローブを着込み、其の上から飾り気のない青色のマントを纏っている。そして室内では、奇妙にも星空のような煌きが立ち込めており、ぼろぼろのカーテンが光を外に漏れ出さぬよう情け程度に窓を隠している。
「ケイさん、ここ、ここの術式はこれで大丈夫ですか?」
「...うん。見た所問題は無さそうだ。後は込められる集中力と魔力次第だ。君なら落ち着いてやれば出きるよ」
「はいっ」
声を掛けられた子供、まだあどけなさが残る可憐な少女、は身体から伝わって放たれる魔力の糸を裁たせないようにより一層意気を燃やした。手から紡がれる糸は幾十もの細糸に別れて神秘的な光を放ち、複雑で難儀な術式を編み込んだ小さな魔方陣を描いている。
少女に声を掛けた者、この場で居る中で最高齢だがそれでも十八にも及
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