4部分:第四章
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第四章
「それが一番駄目だからね」
「それはその通りですけれど」
「だからなんですか」
「焦らない、絶対に」
「そうなんですね」
「そう心掛けているんだ」
宮城は屈託のない笑みを浮かべて答えた。
「だからいいね。頑張ろうね」
「はい、じゃあ次のレースに優勝ですね」
「そうされるんですね」
「絶対にそうするよ」
「その為にこうしているからな」
宮城に続いて来栖もだった。二人はトレーニングにバイクの再開発も行ってだ。あと一ヵ月後に迫ったレースに向かっていた。そしてだ。
毎日夜遅くまで二人で新しいバイクの設計や開発を進めてだ。休むのはガレージの中で寝袋ということが多くなっていた。だがそれでもだった。
二人の目は死んでいなかった。あくまで輝いていた。そんな二人を見てだ。
「凄いな、二人共」
「あそこまで熱中出来るんだな」
「夜遅くなで開発されてな」
「レースに向かってるんだな」
スタッフはそんな彼等に脱帽さえした。そうしてだ。
二人に差し入れをしたり何かと助けてだ。彼等もレースに向かっていた。
そのバイクが完成したのはレースから一週間前だった。そのバイクはだ。
外見はかなりスマートだ。だが細かい部分は違っていた。そのバイクを試運転したのは来栖だった。彼はレース場で試運転をしてから言うのだった。
「いける、これならな」
「いけますか」
「君も乗ってみてくれ」
レース場を何周かしてからピットインしてだ。駆け寄ってきた宮城に答える。まだバイクに乗っていてヘルメットを脱いだところで言ったのである。
「これはいける」
「じゃあ一週間で、ですね」
「このバイクに慣れよう」
「ですね。それじゃあ」
その一週間もだ。彼等は焦らなかった。やはり冷静にそのあらたに開発したバイクに馴染んでいく。スタッフ達と協力しながらだ。
そうしてレース本番もだった。二人は冷静だった。スタッフ達が熱く燃えていてもだ。
その彼等にだ。こう言うのだった。
「バイクの点検は細かいところまで頼む」
「で、乗る順番は俺が最初でね」
淡々とさえしてだ。予定を進めていってだった。そうしてだ。
スタッフ達に述べていく。やはり冷静だった。だがその彼等にだ。他のスタッフ達は驚きを隠せずにこう尋ねたのであった。
「あの、今日も冷静ですけれど」
「熱くなったりしないんですか?」
「焦らないのはわかりましたけれど」
「それでもなんですか」
「そうだ。何か不都合があるか」
「それで悪いとは思わないけれど」
やはりこう返す来栖と宮城だった。それでだった。
二人はレースに向かう。レースの間もだ。二人は水、いや氷の如く冷静に交代で走っていた。レースは好調でトップを走っていた。
だがトップでもだ。二人はだ。
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