他が為の想い
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中に突入していた。
「くそっ……後で絶対明の奴にも告げ口してやる」
齎された内容は意味不明であったのだ。
徐晃が飛将軍のような武力で、たった一人で七千余りの兵を壊滅させた……そんなこと馬鹿げてる、と猪々子は鼻で笑っていた。
――徐晃の実力はあたい達がこの目で見てしっかり知ってんだ。初めからそんな武力を持ってるならなんで呂布相手に倒れるってんだ。自分の失態を虚言で取り繕おうなんて……これで郭図も終わりだな。田豊に全部抑え込まれるだろ。
馬を走らせ、大嫌いな男にざまあみろと呟いて少し気分が良くなっていたが……猪々子は道中の様子を見て顔が蒼褪めて行った。
幾多の袁紹軍の死体とほんの僅かな劉備軍の死体。笑みを携えた劉備軍の亡骸には見覚えがあった。
思い出されるのは幽州の追撃戦。あの時は隣に斗詩が居て、明の率いる張コウ隊という化け物がいたから林道を抜けられた。
今は……例え郭図が多くの兵を追撃に当てていようと、たった三百の騎兵で同じ事を為せと言っている。それも前よりも暗く、狭い間隔の道で。
ただ、武人としての目は、冷静に物事を判断してもいた。
前の戦では死んだ敵兵の数はかなり多い。しかし今回は……少なすぎるのだ。袁紹軍の死体に刺さっているのは矢では無く槍。的確に急所を狙った切り傷も見られる。
つまり、相手はこういう場所での戦闘を想定して練兵を行っているという事であり、関靖の部隊とは比べものにならない程手強いということ。
舌打ちを一つ。進む速度を少しだけ緩めた。
相手は歩兵。進軍速度もそう速くないのならば、まだそこまで焦る事も無いのだと意識を切り替えた。
「おい、相手は幽州の追撃ん時よりやばいバケモン部隊だ。郭図のバカが送った追撃が途切れたら……いや、全滅してたらあたい達は全力で駆け抜ける。この兵の死に方でいったらきっと着くころには五十くらいになってるからさ」
敵の強大さから、彼女は普段よりも冷静であった。
失敗出来ないのは猪々子も同じであり、斗詩も同時に追い詰められている。
捕獲を推している上で今回も失敗してしまうと信用は地に落ち、新たに友達となった明も夕も、昔馴染みである斗詩も麗羽も責められる事になるのだ。
だから、今回ばかりは普段使わない頭を使っていた。幽州での経験が口惜しくて、どうすればいいかを考え続けていたのもある。
幾刻か進む内、絶叫が耳に届いてくる。
遠目から見えるそれは……あまりにも通常の戦闘からかけ離れたモノであった。
先行させた部隊が少数の兵によって挟撃されている。否、包囲されている。
一人殺しては逃げ、森の中から飛び出しては斬りかかり、また逃げて行く。
攪乱されてどうしていいかも分からず、袁紹軍の兵は進もうとするも、道を封鎖する兵は前後七人
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