他が為の想い
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ぐモノを守ろうとする愚かな彼への同情でもあった。
優しいから、殺す人にも想いを向けているのが彼であったのに、それを捨ててはもう彼では無くなってしまうというのに。
それは自身への悔しさでもあった。
人を外れる程の力を振るわせなければならない程、己が主の力になれない自分達があまりにも無力過ぎて哀しすぎて。
それは殺されたモノ達への想いでもあった。
今、殺されているモノ達は、彼に想いを繋いで貰えない。人として扱って貰えず、虫のように、蟻の群れのように、ただ殺されていくだけなのだ。
「もう……いい……もう、やめてくれっ……御大将っ……やめてくれぇっ!」
徐晃隊は涙を零し続け、脚と手を動かして……ソレの代わりに人を殺した。
雛里を助ける為だというのは分かっている。自分達の力が足りないから、アレが代わりに戦っているのも分かっている。
でも……その姿が哀しくて苦しくて、徐晃隊は次々に叫びを上げた。
せめて自分達だけでも、彼の代わりを務めよう、一人でも多くの想いを繋ぐのだ、アレにこれ以上殺させてはいけないと。
一刻、二刻、三刻……暴風が舞い続けた戦場にて、もう彼らの周りに近付く敵兵は居なくなった。
郭図の指示も聞かず、純粋な恐怖から、人としての本能的な恐怖から、膨大な距離を取ったのだ。
徐晃隊の残存兵数は約三百人。敵は、戦中も数を増やしていた為に、被害が八千を超えていた。
キリキリと、首を回すソレは、敵がもう近づいてこない事を理解して漸く、その場に膝を着いた。
うつ伏せに倒れ伏し、動かない様を見て、副長の脚はやっとソレに向かう。得体のしれないモノは恐ろしい、されども、彼である事を願って。
同じようにぞろぞろと駆けて行く徐晃隊の面々。その中の一人の背で、彼女が目を覚ました。
「……んぅ……っ! い、戦はっ……うぅ……」
飛び跳ねるように頭を上げたからか、雛里の頭に猛烈な頭痛が走る。
副長は秋斗の身体を確認して、ほっと息を一つ。後に立ち上がって笛を大きく鳴らした。秋斗の笛でのその鳴らし方は、彼の相棒を呼ぶためのモノ。頭のいい月光は遠くから戦場を見ていたのか、その音色に反応して駆けてきた。
徐晃隊の一人は副長に頷かれて、秋斗の身体をその背に負ぶる。
「秋斗さんっ! どうしたんですかっ!」
それを見て、雛里は徐晃隊の背からもがいて飛び降り、彼の服に縋りついた。
「鳳統様……落ち着いて聞いてください。御大将は……人として無茶をしました。気を失っているのでこのまま月光に乗せて運びます」
「な、何があったんですか!? あれほどの敵兵が周りにいないなんて……」
「……多分、御大将は人を外れたのです。目を覚ました時に何があるのかも分かりません。御大将が優しい人であり続け
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